研究概要 |
リン原子修飾オリゴ核酸は、特定の遺伝子発現を抑制する核酸医薬として期待されているが、その不斉リン原子の立体制御による標的mRNAへの結合能やヌクレアーゼ耐性の改善が求められている。一方、既存の立体選択的合成法は化学量論量の不斉補助基が必要であるなどの本質的な問題点を数多く抱える。 これらの問題点を解決すべく、本研究ではキラルブレンステッド酸を触媒とするPS-DNAの触媒的不斉合成法の開発を行った。PS-DNAはリン原子修飾オリゴ核酸の一種であり、核酸医薬として最も有望視されている(これまでに2品目が医薬品として承認されている)。平成24年度までに、天然型核酸合成用のホスホロアミダイトモノマーと新規ビナフチルリン酸塩触媒を用いることによって、PS-DNAの2量体を最大75:25の立体選択性で得る手法を開発した。平成25年度は、まずブレンステッド酸触媒のビナフチルリン酸骨格の検討による反応の立体選択性の改善を試みた。3,3'位の置換基を種々検討したところ、嵩高い2,4,6-triisopropylphenyl基を用いた時、反応の立体選択性は80:20に向上した。更に、モノマーのホスホロアミダイト部位の保護基をシアノエチル基からメチル基に変えることによって、最大で98:2と極めて高い立体選択性でPS-DNA 2量体が得られることを見出した。次に、本法を固相合成に応用したところ、PS-DNA 2量体を93:7の高い立体選択性で合成できることを見出した。最後に、ホスホロアミダイトモノマーから反応の進行に従って遊離しキラル酸活性化剤を失活させるジイソプロピルアミンの捕捉剤としてphenylisocyanateを反応系中に添加したところ、反応速度は低下するものの触媒量のキラル酸活性化剤で本反応が進行し、97:3の立体選択性でPS-DNA 2量体が得られることを見出した。
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