研究実績の概要 |
1 触媒設計のためのFLPによるイミンの水素化反応の理論的考察 FLP触媒によるイミンの水素化反応は以下の機構で進行すると考えられている。まずFLPが水素開裂を行うと、ルイス塩基上にプロトン、ルイス酸上にヒドリドが結合する。このプロトンはイミンの窒素と水素結合することでイミンが活性化される。その後、ヒドリドがイミンの不飽和炭素を攻撃し、水素化反応が完了する。この機構を見ると、野依教授らにより開発されたホスフィン-ルテニウム-ジアミン触媒によるケトンの不斉水素化反応の反応機構に類似している。そこで、FLP分子内にルイス酸、ルイス塩基を配置し適切な不斉源を導入すれば、効率的不斉FLP触媒が開発できると考えた。研究代表者は分子設計の情報を得るためRepo, Riegerらにより報告されたFLP の水素化反応の遷移状態を計算した。モデル反応として、FLP-H+H- 2とメタンイミンの反応の遷移状態をB3LYP/6-G(d)レベルで求めた所、イミンへのプロトン移動とイミン炭素へのヒドリド攻撃は同時に起こっており、協奏的反応であることが示された。この遷移状態を見ると、FLP1の窒素周りに不斉源を導入すれば、イミンの不斉水素化が行えると考えられた。そこで反応点に近い所に不斉炭素を有しかつC2対称である光学活性2,5-二置換ピロリジンをFLP触媒に導入した新規分子を開発することにした。 2 新規不斉FLP触媒の合成検討 2,5-ジメチルピロリジンを有する新規FLPを設計しその合成を試みた。現在までに中間化合物の合成には成功したが、この中間体へのB(C6F5)2基の導入までには至っていない。
|