天然には第四級不斉炭素中心を有する生物活性物質が多数存在し、医薬品のリード化合物となるものも多い。このような化合物を合成する上で、第四級不斉炭素中心を望む立体化学で光学純度よく合成することは非常に重要なテーマであり、有機合成化学者に対する恰好の標的となっている。今回、有機触媒反応を活用した独自のアプローチとして、A)Robinson環化、B)Michael付加反応、C)Diels-Alder反応、D)不斉識別反応に焦点をあて研究を行った。 1。ジアミン系有機不斉触媒を活用した不斉Robinson型環化反応の開発:キラルジアミンとキラルジカルボン酸を組み合わせた不斉Robinson型環化反応を基軸として、ヒガンバナアルカロイド(-)-mesembrineの短工程での合成ルートを確立した。 2。キラルチオ尿素/PPY二重触媒システムを活用した不斉Michael付加反応の開発:キラルなシクロヘキサンジアミンから容易に調製される一級アミン/チオ尿素複合型触媒とPPYとを組み合わせた二重触媒システムを活用し、種々のエノン類に対するマロン酸エステルの高収率かつ高選択的不斉Michael付加反応を達成した。 3。キラルチオ尿素触媒を活用した不斉Diels-Alder反応の開発:チオ尿素系有機触媒を活用し、3-アルキリデンオキシインドールとRawalジエンとの不斉Diels-Alder反応により、シクロヘキセノン骨格が3位でスピロ置換したオキシインドール誘導体を光学純度よくきれいに得ることに成功した。 4。不斉識別的官能基変換反応の開発:不斉識別的官能基変換反応を基軸とした第四級不斉炭素中心構築法の開発として、[2]で開発した不斉Michael付加反応を利用し、4位に異なる二つの置換基を有するシクロヘキサジエノン類の不斉識別的Michael付加反応を達成した。
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