研究領域 | 有機分子触媒による未来型分子変換 |
研究課題/領域番号 |
24105524
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
徳永 信 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40301767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 不斉加水分解 / 四級アンモニウム / 相間移動触媒 / エステル |
研究実績の概要 |
天然の酵素や微生物はエステルの不斉加水分解触媒として早くから利用され工業化もされてきた。酵素を用いたエステルの不斉加水分解は1905年のワールブルクらによるものまで遡る。一方で、触媒的不斉合成が大きく発展し、今や不斉反応が実現されてない反応を探すほうが難しい状況になった現在でも、エステルの不斉加水分解は難題として残されてきた。シクロデキストリンなどを用いた人工酵素などの研究が70年代より行われてきたが、基質濃度が非常に薄く、また不斉反応に関しても極めて限定された例のみであり、実質的に達成されているとは言えない状況である。生体触媒によるエステルの不斉加水分解は実用化例も多いが、一般的に酵素はその安定性が低く、また、単位重量当たりの活性も低いといった問題がある。その一方で、分子触媒は、酵素と比べてはるかに小さな分子量と簡素な触媒構造を有しているため、触媒の高い安定性と比活性の大きな改善が期待できる。我々は、エステルの塩基加水分解の不斉反応化を考え、有機分子触媒である不斉四級アンモニウム塩を用いた研究を行ってきた。この触媒系はこれまでに有機触媒としてキラルなエノラートによるアルキル化反応などで実績があるが、ここでエノラートではなく、有機層中にキラルなOH-を発生させ基質と反応させることにより不斉加水分解を達成する試みである。この作業仮説に基づき、反応条件を種々検討した結果、シンコナアルカロイド由来の四級アンモニウム塩を相間移動触媒として用いることにより、種々のアルケニルエステル類(エノールエステル類)を最高95% eeと、高収率、高エナンチオ選択的に不斉加水分解することに成功した。エナンチオ選択性は、ジエニルエステルタイプの基質の方が全体的にやや高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エノールエステル、ジエニルエステル類の不斉加水分解で最高95%eeの選択性を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
エノールエステル類ではない、単純エステル類、具体的にはN-アシルアミノ酸誘導体と2-アリールプロパン酸エステル類で最高85%eeの選択性となっている。これを改良したい。
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