求核剤基質としてβケトエステルやαホルミルエステルの代わりにβケトチオエステルやαホルミルチオエステルを用いると反応速度が格段に向上することが分かった。さらに種々触媒の検討を行った結果、ウレアや、チオウレアなどの水素結合供与基を適切な位置に持つ二官能性の塩基性有機分子触媒が適している事が分かった。最終的にチオウレア基と第3級アミノ基をあわせ持つセリン由来のキラル有機分子触媒を用いるとαホルミルチオエステルのビニルケトン類への共役付加反応が高いエナンチオ選択性(最高95% ee)で進行することを見出した。更に検討を進めると、様々な骨格のαホルミルチオエステル及びビニルケトン類で90% ee以上の高いエナンチオ選択性で付加が進行することが分かった。 βケトチオエステルのビニルケトンへの共役付加反応においてはウレア基とグアニジンを組み合わせた有機分子触媒で最高52% eeまで選択性を高めることに成功した。また、類似の二官能性グアニジン触媒を用いる5H-oxazol-4-oneのアレニルカルボニル化合物への共役付加反応の開発にも成功し、この反応を用いて天然アルカロイドの加水分解生成物の短段階合成を達成した。
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