研究領域 | 多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究 |
研究課題/領域番号 |
24105707
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
永廣 秀子 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10397838)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中間子原子核 / 量子異常 / カイラル対称性 |
研究実績の概要 |
本研究は、eta-prime(958)中間子の有限密度中での質量減少の実験的な検証の実現に向けた理論研究を行うものである。eta-prime中間子の質量はUA(1)量子異常の存在とカイラル対称性の自発的破れの効果があいまって決定されると考えられていることを踏まえ、有限密度内での中間子の質量減少を検証することにより、カイラル対称性の部分的快復の効果、UA(1)量子異常の媒質中での振る舞いを明らかにする。本研究では、eta-prime中間子原子核束縛系を生成し、その束縛状態のエネルギーを観測することで、eta-prime中間子と原子核、及びeta-prime中間子と核子との相互作用の情報を引き出し、eta-prime中間子に関する諸性質を理解することを目的としている。
本年度は、eta-prime中間子原子核の生成反応について具体的に検証し、陽子を入射させ重陽子を観測する(p,d)反応の可能性について、理論的にそのエネルギースペクトルの計算を行った。また微視的な相互作用から結合チャンネル法を用いたeta-prime中間子と原子核の光学ポテンシャルを構築し、その微視的相互作用から、eta-prime中間子が原子核内で吸収された時に射出される核子対の同時観測によるエネルギースペクトルの理論計算を行い、これにより実験において予想される大きなバックグラウンドを減少させる可能性について理論的に検証した。これらの理論計算に基づき、実験研究者と共に実験の可能性を議論し、現在計画を遂行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたとおり、eta-prime中間子原子核束縛系の生成について、実験研究者とも具体的に議論を行い、ドイツ重イオン研究所での実験の提案を行っている。その実験提案に基づき、論文を作成し出版した他、理論計算についても、論文を出版した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、微視的な光学ポテンシャルの改良を行い、より精密な理論的予言を行うための準備を行っている。具体的には、結合チャンネル法を用いたeta-prime中間子と核子との相互作用模型の構築についてこれまでは考慮されてこなかったエネルギー依存性を取り込み、現在報告されているeta-prime核子の散乱長や、eta-primeの透過確率などの各実験データとの整合性を確認し、より統一的に実験データを説明できる模型の構築を目指している。
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