本研究の目的は、QCDの動力学によってクォークとグルーオンから中間子や重粒子などのハドロンがいかに形成されるかという問題を解明することである。特に近年QCDを基礎として、新しいタイプのハドロンの存在および現象の可能性が指摘され、高統計データによって確認することが求められている。そこでこの目的に向けてKEK・BELLE実験による高統計高精度の実験データを用いて中間子スペクトルを見直すことを目標とした。特にa1中間子およびK1中間子はρ中間子などのベクトル中間子に次いで基本的な中間子にもかかわらず、質量、共鳴幅とも十分な精度で定まっていない。そこでB→D*a1、a1→3π反応およびB→J/ΨK1、K1→ωπ反応を解析し、a1中間子およびK1中間子の質量、共鳴幅や分岐比などのパラメーターの決定を行い、中間子スペクトルの実験的データの確立に貢献し、ハドロンの理解の前進を目指した。解析では、Belle実験データからのB→J/ΨK1、K1→ωπ反応の抽出プログラムを作成し、反応データの抽出を行い、さらにBelle実験全データの抽出を進めた。また同様にB→D*a1、a1→3π反応についての抽出プログラムについても共同研究者とともに作成し、検討を行った。同時に部分波解析プログラムについてCERN・COMPASS実験グループが開発したROOTPWAプログラムを計算機サーバーにインストールし整備した。相補的反応データとしてハドロンビーム回折散乱実験であるCERN・COMPASS実験から新しい興味深いデータの比較、検討を行い、ハドロンビーム回折散乱データではB中間子崩壊によるデータでは生じない非共鳴回折散乱事象の混入の寄与があることを見出した。これはB中間子崩壊データの優位性を示すものであり、Belle実験および今後のBelle II実験データの重要性をを示すものである。
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