研究領域 | 多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究 |
研究課題/領域番号 |
24105710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 岳雄 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (40353370)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | データ収集系 / 素粒子実験 |
研究概要 |
国内最大規模の加速器実験Belle II実験では、データを独自プロトコルで通信する通信基盤(Belle2Link)、Belle2Linkのデータを受信する電子回路、Belle2Link用電子回路を読みだすCOPPER読み出しシステム、トリガータイミングを検出器に分配するシステムなどを組み合わせて全体のデータ収集を構築する。Belle II実験のデータ収集系は巨大なシステムであるが、本研究ではこれらの要素技術を簡素化することで小規模実験でも利用可能な汎用小型データ収集システム(POCKET DAQ)を開発する。 この中でとくにCOPPERデータ読み出しシステムの中枢となるCOPPER基板(電子回路)は完全にBelle II実験で想定されるデータサイズや事象レートを上限に設計されていた。しかし、POCKET DAQではCOPPER基板の設計値を超えた現象も取り扱う必要があり、POCKET DAQ実現のための難関のひとつである。本研究ではまずCOPPER問題を解決することを優先した。まずCOPPER基板に搭載されているバッファー(FIFO)のデータあふれ処理やCOPPER基板をCPUで読みだすための自家製デバイスドライバの調整、またCOPPER基板を読みだしたCPUがストレージ側にデータを送る際のネットワーク接続構成などの汎用化を追究した。さらこれらのセットアップや問題解決をある程度自動化してユーザーから隠ぺいするためのスクリプトも開発した。 本研究では、(研究実施計画外の)研究協力者と協力して開発した成果物の効果を証明するため、ドイツの研究所(DESY)でビームテスト実験を行った。その結果、上記COPPER基板内の諸問題とその周辺の課題がほぼすべて解決された上、COPPER基板の安定動作も証明され、POCKET DAQの完成に向けて非常に大きな成果を得るにいたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COPPER読み出しシステムをPOCKET DAQに応用する際にはその設計上限値を超えてCOPPER基板を使用しなければならないため、本件はPOCKET DAQ実現の中でも極めて困難な課題のひとつである。最終的にこれを乗り越え、COPPER読み出しシステムとその周辺にある諸問題をビームテスト実験で解決し、最終的にそのビームテスト実験自身でCOPPER読み出しシステムの安定性までをも証明するにいたった。このことにより、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
COPPER読み出しシステム以外の部分、すなわちデータを独自プロトコルで通信する通信基盤(Belle2Link)・Belle2Linkのデータを受信する電子回路・トリガータイミングを検出器に分配するシステムなどを汎用小型化しPOCKET DAQに落とし込む研究を行う。さらにこれに研究が成功したCOPPER読み出しシステムを統合してPOCKET DAQの完成形をめざす。POCKET DAQの完成を評価するにあたっては、DESYでのテレスコープテスト(Belle II実験で使用するための崩壊点検出器の一部を配置し、ビームを照射して検出器のヒットを見る実験)にPOCKET DAQを投入し、その有効性を証明する。DESYテレスコープテストは、Belle II実験よりもはるかに小規模な実験でありPOCKET DAQの証明に最適である。
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