胚発生過程では、細胞集団が移動することで器官のような3次元の形態を形成する。このとき、個々の細胞はランダムウォークするのではなく何らかの規則によって運動しなければならない。本研究課題では、「細胞-基質間」、「細胞-細胞間」の力学場測定を通じて、細胞や細胞集団が3次元運動する際の法則を明らかにしてゆく。本年度得られた研究成果は、①コラーゲンゲル内に生じた変形解析法の構築、②細胞集団が移動する際の基質に生じた変形の可視化、③3次元での細胞が出す力の評価と細胞運動観察、を進めているである。①に対しては、 コラーゲンを蛍光標識したものと細胞膜を光らせた細胞を用いて共焦点レーザー顕微鏡によりコラーゲンゲルと細胞の3次元空間分布を取得し、その空間分布から弾性体内の応力解析を可能にする有限要素解析ソフトウェアを構築した。さらに、顕微鏡に設置する温度調節機能などを検討することにより,試薬の投与によって大きくフォーカス面が変化しない&長時間安定した観察が可能な条件を検討した。②に対しては、集団内での個々の細胞の移動を計測するために核を蛍光標識した細胞株を樹立し、その細胞を蛍光標識したコラーゲンゲル上に培養し、細胞の運動にともなうコラーゲンゲルに生じた変形の空間分布を測定した。③では、①で構築した系を発展させ、細胞の力の発生源の大部分を占める細胞骨格を崩壊させる試薬条件を調べ、細胞骨格崩壊前後におけるコラーゲンゲルの変形量の評価をおこなった。さらに3次元での細胞の運動を観察した。
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