骨は、微小血管を中心としたオステオンと呼ばれる最小単位(直径:0.2 mm)から構成されており、一定間隔で血管構造が存在している。骨の形成、維持においては骨芽細胞や破骨細胞が大きな役割を果たすが、これら骨形成と骨吸収は微小血管を中心として営まれている。骨組織は、複数の細胞種によって構成され、一般に考えられるより複雑な構造を有しているため、このような血管網を有する骨組織をin vitroで構築する技術は未だに確立されていないのが現状である。 そこで本研究では、電気化学を利用した血管様構造の作製技術を用いて、三次元的な骨様組織の作製に取り組んだ。平成25年度は、前年度に設計した自己組織化オリゴペプチドを用いた電気化学的な細胞脱離技術により、ハイドロゲル内に血管内皮細胞で内表面が覆われた血管様構造を高速モールディングにより作製する技術を確立した。この血管内皮細胞は送液培養において徐々にゲル内に侵入して管腔構造を形成し、規則的に配置された血管様構造を互いに接続することが示された。さらに、ハイドロゲル内に骨細胞への分化が容易な間葉系幹細胞を導入しておくことで、送液培養中にハイドロゲル内で高密度になるまで増殖することを示した。この培養系をさらに骨分化誘導培地で培養することで、初期の骨分化マーカーが発現することを示した。また、多孔質の骨伝導剤(b-TCP)をハイドロゲルと組み合わせることで、血管構造を有する骨様組織を作製した。 今後、さらに長期的に送液培養し、なおかつ三次元的に血管様構造を配置することで、立体的な骨様組織が構築できる可能性を示した。
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