公募研究
本公募研究では、物理化学的に定義された細胞外環境モデル上での細胞接着の定量計測を通じて、3次元組織の形成や機能化を制御する外部環境因子を見出すことを目的としている。H24年度は、機能性高分子材料を用いて、軟組織と硬組織のメカニクスを模倣可能なインビトロモデルの構築を行った。前者については、硬さ制御が可能なゲル(E: 0.1 ~ 100 kPa)の表面に対して、生体由来のタンパク質や成長誘導因子を複合的にコートした新しい軟組織環境モデルを構築した。これにより、生体由来の生化学的な細胞刺激因子を有しつつ、硬さを厳密に制御した環境下で細胞を培養することが可能となった。またこのモデルを用いて、A03公募班の武部先生(横浜市立大)と3次元細胞集合体形成の制御に関する共同研究に着手し、その基礎的検証において良好な結果を得ている。 また、後者の硬組織環境モデルについては、ドイツの研究者との国際連携により、疎水性ポリマーを用いてヤング率を0.1 kPa~10MPaの範囲で制御可能な硬組織環境モデルを構築した。実際に骨肉種細胞を播種したところ、その細胞接着様式がモデルのメカニクスに依存することを見出した。さらに、より硬い環境ほど、均一な2次元細胞シートが形成することを明らかにし、細胞組織形成におけるメカニクス制御の重要性を見出した。本成果はJ. Phys. Chem. Bに原著論文として発表している。
2: おおむね順調に進展している
H24年度は、3次元細胞システムを構築するための細胞外環境モデルの構築と評価に達成目標としていた。実際これまでに、連携研究者であるM. Tanaka教授(Institute of Physical Chemistry, University of Heidelberg)らとの共同研究により、ハイドロゲルや疎水性ポリマーを用いた軟・硬組織環境のモデルを構築することに成功した。さらに本モデルを用いて共同研究の枠組みの元、3次元細胞集合体形成の制御に関する共同研究に着手し、その基礎的検証において良好な結果を得ている。よって本研究は予定通り進展していると言える。
今後も様々な機能性材料を用いて、生体内の様々な細胞外環境のモデルを作製し、光定量計測により3次元組織形成を制御する環境因子を調べる予定である。特に、武部先生との共同研究では、細胞集合体の核形成位置をコントロールするために、硬さの空間勾配を有するゲルの作製を試みている。また別の系ではあるが、原子間力顕微鏡による再生軟骨の力学特性の評価を、武部先生との共同研究の枠組みの元行っている。この成果は、既に3月末の日本再生医療学会で発表したとともに、近日中の論文投稿を予定している。また詳細は論文発表前で避けるが、現在光干渉法による細胞―ゲル界面の定量的可視化法の開発にも取り組み良好な結果を得ている。本手法が完成すれば、モデル上での細胞接着を定量的に可視化することも可能になり、系の設計・測定・解析が一元的に行えるシステムの開発も行えると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件)
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