公募研究
本年度は、機能性ハイドロゲルによる細胞外環境モデルと、先端的光学法による細胞力学応答評価システムを用いて、3次元細胞システムの構築を制御する外部環境因子を解明することを目指した。まず組織形成のファーストステップである細胞接着が細胞外環境の硬さにどのように影響されるかを調べた。具体的には、筋芽細胞とゼラチン基板間の接着力をレーザー圧力波法により評価したところ、ある基板ヤング率(約10 kPa)付近で、接着力が非線形的に増大することがわかった。興味深いことに、筋芽細胞は基板硬さが約10 kPaで効率よく筋肉状組織を形成することが知られており(Engler et al., J. Cell Biol. 2004)、この結果は組織形成に最適な細胞-外部環境間相互作用に関する基礎的知見になると考えられる。また上記以外にも細胞-ゲル間の接着領域を定量観察可能な光干渉法の開発にも成功した。これら成果はJournal of Physical Chemistryなどに原著論文として発表した。また横浜市立大学の武部准教授と領域内連携により、間葉系幹細胞と血管内皮細胞の共培養系における3次元細胞集合体形成と外部環境メカニクスとの相関解明に挑んだ。硬さの制御が可能なゲル基板を作製して実験を行ったところ、立体的な集合体形成がある範囲のヤング率のゲルでのみ誘起されることを見出した。さらに、この細胞集合過程を蛍光像観察したところ、最適なゲル上では細胞の運動速度や集団運動性が顕著に増大していることがわかった。これら結果は、外部環境の硬さが臓器形成における重要因子の一つであることを示している。これらの成果は再生医療学会などで学会発表を行い、現在論文投稿中である。また武部准教授とは再生軟骨の力学特性評価に関する共同研究も推し進め、その成果はStem Cellsに論文発表した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Stem Cells
巻: 32 ページ: 816-821
10.1002/stem.1529
Journal of Physical Chemistry Letters
巻: 5 ページ: 253-257
10.1021/jz402463u
Chemical Society Reviews
巻: 43 ページ: 2147-2158
10.1039/C3CS60226E
Journal of Physical Chemistry B
巻: 117 ページ: 4081-4088
10.1021/jp4008224