研究領域 | 超高速バイオアセンブラ |
研究課題/領域番号 |
24106510
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
武部 貴則 横浜市立大学, 医学部, 助手 (20612625)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 移植・再生医療 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、ヒトiPS細胞の肝細胞への分化誘導研究において、従来の「細胞の分化誘導」という開発概念から脱却し、異なった細胞系譜の時空間的な相互作用を活用した、「臓器の再構成に基づく分化誘導」を実現化した革新的な三次元培養技術を新たに開発し、ヒト臓器創出を可能とする細胞操作技術を確立した。本研究では、われわれが開発した方法を用いて、ヒトiPS細胞由来内胚葉細胞集団に対し、血管内皮細胞、及び間葉系細胞との協調的相互作用を試験管内において再現化することで、三次元的なヒト肝臓の原基への自己組織化を誘導するとともに、そのプロセスを共焦点顕微鏡によるタイムラプス観察により可視化した。得られた三次元組織は、マウス肝原基との類似性を組織学解析や遺伝子発現解析により検討した。さらに、形成された三次元組織の成熟過程を、最新のin vivoライブイメージング法と、臓器の機能発現の定量評価系を組み合わせることで、誘導された原基が移植により血管構造を有するヒト臓器へと成熟していく組織化過程を可視化することに成功した。また、膵島誘導の基礎知見を得ることを目的として、同様の手法により膵β細胞株から立体組織の形成が可能であるか否か検証を行った。ヒトiPS細胞由来内胚葉細胞を起点とした組織再構築過程を三次元的に捉え、ヒト臓器の機能成熟化と血管等との協調的相互作用の全体像解明することができれば、得られた基盤的知見を元に臓器形成に必須となる動的環境場の特徴を精密に再現化するシステムを再設計することで、ヒトiPS細胞から高い治療効果を発揮可能なヒト肝・膵組織の再生医療技術を確立することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画どおり、in vitroにおける臓器原基の形成過程のライブ観察に加えて、in vivoにおける臓器原基の成熟過程のライブ観察にも成功しており、その成果は国際学術誌に掲載が決定している(Takebe, et al. Nature. In press)。したがって、当初計画を大幅に上回る実施状況にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
形成された三次元的なヒト器官原基の治療的効果を検討するために、ジフテリア毒素受容体を肝細胞および膵β細胞のみに強制発現させたトランスジェニックマウス(Alb-TRECK/scidおよびIns-TRECK/scidマウス)を用いて移植実験を実施する。本マウスをレシピエントとすることにより、肝細胞・膵β細胞特異的に任意のタイミングで強い障害を引き起こすことが可能となる。ヒトiPS細胞由来三次元肝・膵原基の治療効果を、各種臓器障害マーカーおよび生存率等の変動を計測することにより評価する。機能成熟化の最適条件を決定するために、移植部位(皮下、腎被膜下、腸間膜上など)の検討を行う。 また、領域内連携により新たに生まれた埼玉大学・産総研グループとの連携も強化し、新たな研究成果の創出を図る。
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