我々の研究グループは簡便に光分解性ゲルを形成できる架橋剤として、活性エステル型光開裂性架橋剤の開発を行っている。本研究ではこの簡便な架橋剤を利用して調製した光分解性ゲルを用いて、新たな細胞操作・組織工学手法の開発を進めている。平成25年度はゲルの弾性率制御に関する検討と三次元組織の灌流培養手法に関する検討を行った。 ゲルの弾性率制御を行うために、光開裂性架橋剤NHS-PC-4armPEGと非開裂性架橋剤NHS-4armPEGを所定の比率で混合し、amino-4armPEG溶液と反応させることで光照射に応じて部分的に分解するゲルを作成した。光開裂性架橋剤の混合比の増加に伴い、光照射前後の弾性率が共に低下する傾向が確認された。また、マイクロパターン光照射と組み合わせることで、その弾性率をマイクロオーダーで3次元的に制御できることが明らかとなった。本研究はA03班の水谷グループとの共同研究の成果である。 三次元組織を長期培養するためには、三次元組織に培養液を灌流しながら培養することが必要であると考えられる。今年度は光分解性ゲルに細胞を内包して作製した三次元組織体をマイクロ流体デバイスに組み込むことにより、作製した三次元組織の灌流培養を行う手法を確立した。モデルケースとしてゼラチンと光開裂性架橋剤NHS-PC-4armPEGを混合して作製した光分解性ゲルにヒト肝癌由来のHepG2細胞を内包し、マイクロパターン光照射により、所定の三次元構造を有する組織体を得た。マイクロ流体デバイスはポリジメチルシロキサンを用いてソフトリソグラフィー法により作製した。開閉型のマイクロチャンバーを有するマイクロ流体デバイスを採用することで、三次元組織体の構造を破壊することなく、培養チャンバーに作製した三次元組織体を組み込むことができ、三次元組織体に培養液を流しながら培養できることを確認した。
|