公募研究
ナノサイズの細孔を有する多孔質金属材料は、広い表面積と特異な物性を示すことから、様々な分野において応用が可能である。申請者はこれまでに、金やパラジウムから成る多孔質材料を作成し、これらが種々の分子変換反応において優れた不均一系触媒として機能することを見出している。特に多孔質金は、アルコールの酸素酸化反応の触媒として優れ、添加剤を用いることなく穏やかな条件下で反応を進行させることができる。反応は本触媒の無数の細孔を反応剤が通過する過程で進行するため、本申請研究ではこの材料を一種のナノリアクターと見なし、このナノ構造と触媒活性の相関や異種金属との相乗効果を明らかにすることにより触媒活性の向上を目指す。本年度我々は、金銀合金から作成した多孔質金をアミンとメタノールの混合液に加え、酸素雰囲気下で反応させたところ、アミンのホルミル化が進行し、対応するギ酸アミドが収率よく生成することを見出した。一般的な金微粒子触媒では、アミンの酸化体も生成してしまうが、多孔質金を触媒とした場合には、そのようなアミン酸化物は得られなかった。これは本触媒がアミンよりもメタノールを選択的に酸化した結果であり、本触媒が優れた官能基選択性を有することを意味しており、有機合成上有用である。一方、金アルミニウム合金から作成した多孔質金の触媒活性は低く、ほとんど生成物は得られなかった。この結果から、金銀合金から作成した多孔質金に微量に存在する銀が、触媒活性の発現に極めて重要であることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、ナノ多孔質金材料の触媒活性における、構造や異種金属の相乗効果について明らかにしようとするものである。現段階で、アミンの直接ホルミル化反応において、銀が優れた相乗効果により触媒の活性化に大きく貢献することを見出している。そこで本知見を基に、この特徴を活かした新たな触媒の設計やフロー合成など反応集積化への展開が可能であり、当初の計画より早く進行しているため。
ナノ多孔質金触媒を用いることにより、メタノールを用いたアミンの直接的ホルミル化反応の開発に成功した。本手法は安価なメタノールをホルミル化剤として利用でき、しかも反応が温和な条件で進行するため、従来法に比べて合成的有用性が高い。今後はこの金属材料のナノ構造と触媒活性の相関や異種金属による相乗効果を検討して触媒活性を向上させると共に、優れた集積化反応の開発を目指す。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 6件)
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