研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106706
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00284084)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 有機フッ素化合物 / カルバニオン / 選択的変換 / マイクロフロー / 環化付加 / 共役化合物 |
研究実績の概要 |
トリフルオロメチル基などの含フッ素置換基を求核的に有機化合物に導入する反応は,多岐に渡るフッ素化合物を合成する強力な手法である。一般的に、「含フッ素アルキル基の求核的導入」は困難である。これは,含フッ素アルキルカルバニオン種の不安定さに起因するものである。そこで私たちは,求核的フルオロアルキル基導入法の開発を目指し,研究を進めた。 [1] 時間的反応集積化型トリフルオロメチル基導入反応の開発:フッ素官能基導入カスケード環化反応による含フッ素イソベンゾフランの発生とその応用を行なった。フッ化物イオン存在下,o-フタルアルデヒドにCF3-SiMe3を作用させると,トリフルオロメチル基を有するイソクマラン誘導体が高収率で得られた。 次に、p-トルエンスルホン酸による脱水反応により発生したイソベンゾフランをマレイミドで捕捉すると,目的の[4+2]環化付加体が良好な収率で得られた。酸としてPPTSを用いると,中間体を単離せずにワンポット反応で実施できる。得られた生成物を、硫酸を用いて脱水し,トリフルオロメチル化ナフタレン類に誘導することができた。 [2] 求核的トリフルオロエチル基導入反応の開発の試み:「β位にフッ素原子を有するアルキルリチウム」の発生を研究した。スルホキシド基を有する含フッ素アルキルリチウムと,種々の求電子剤との反応を実施している。宇根山らの先行研究においては,当該反応の進行のためにはHMPAの使用が必須であった。私たちはまず,実験操作の簡便性と安全性を重視し,HMPAの代替溶媒として,DMPUが有効に作用することを見い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
求核的フルオロアルキル化反応で、新しい知見が得られた。これらは、フルオロアルキル基の非破壊的導入法の一種であるため、本研究目的に沿って研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前半のカスケード環化は,縮環π-共役系の材料の創製に有用である。現在のところ,本反応において,有機ケイ素反応剤の利用が必須であり,導入可能な含フッ素アルキル基のレパートリーが乏しい。多様なフルオロアルキル基の導入が望まれるため,今後はマイクロフロー法によるフルオロアルキルリチウムの利用を積極的に検討する。
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