研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106707
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮村 浩之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00548943)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 固定化触媒 / 金属ナノクラスター / フローシステム / 金触媒 / 反応集積化 / アミド合成 / 酸素酸化 / 二元金属触媒 |
研究実績の概要 |
前年度までに高分子内包型ロジウム触媒(PI-Rh)を開発しており、本触媒と外部添加したBINAPによりアリールボロン酸のα,β─不飽和ケトンへの1,4付加反応が高い収率、高い光学選択性を持って進行たが、本反応系では顕著なRhの流出がおこることが問題となっていた。 そこで、リガンドおよび触媒構造の検討を行ったところ、RhとAgの合金クラスターを担持した触媒PI/CB-Rh/Agおよびキラルジエンリガンドを用いることで、高い収率、高い光学選択性を維持したまま、Rhの流出を完全に抑制することができた。また、触媒の回収、再利用の検討を行ったところ、複数回の回収、再利用が可能で、例え触媒が失活しても回収した触媒を無溶媒条件下、加熱することで、賦活化することができた。 一方、高分子内包型金ナノクラスター触媒でのアリルアルコールの酸素酸化反応を行った後に、アリールボロン酸とRh/Ag触媒を加え反応温度を100 ℃まで上昇させる時間的反応集積化を行ったところ、高い収率、高い光学選択性で目的物を得ることができた。 これまでにPI-Pt触媒を用いたヒドロキノン類のキノン類への酸素酸化反応を開発してきた。そこで、同一時空間反応集積化によってカテコールとアミンから酸化的にベンゾオキサゾールが合成できないか検討を行った。その結果、予想外の結果として目的とするベンゾオキサゾールの代わりにアミンが酸化的にカップリングしたイミンが得られた。 種々の反応最適化の結果、tBuカテコールとPt/Ir合金ナノクラスター触媒を用いることで様々なアミンのイミンへの酸素酸化反応に有効に機能することを見出した。反応機構研究から、カテコール類とPt/Irナノクラスターが協調的に作用していることがわかり、これは金属ナノクラスターと有機分子触媒による協調触媒系の初めての例である。さらに、本反応を酸化的キナゾリン合成反応へと展開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、高分子内包型金属触媒による不斉炭素―炭素結合形成反応をRh/Agナノクラスター触媒とキラルジエンリガンドを用いることで達成した。さらに、本反応と、既に開発されていた高分子内包型金ナノクラスター触媒によるアリルアルコールの酸素酸化反応と集積化することにより、回収、再利用可能な固相触媒による酸素酸化反応と不斉炭素―炭素結合形成反応の集積化を実現できた。 さらに、白金ナノクラスター触媒を用いたカテコールとアミンからの反応集積化によるベンゾオキサゾール合成法の開発の過程において、予想外にもPt/IrナノクラスターとtBuカテコールが協調して働き、アミンのイミンへの酸素酸化反応が温和な条件下進行することを見出した。これは、世界で初めての金属ナノクラスターと有機分子触媒による金属含有酵素協調触媒系の発見であり、その反応機構は生体内の金属含有酵素であるアミンオキシダーゼの触媒サイクルと類似しており、その学術的意義は大きい。さらに、本触媒反応系を様々な医薬品や生理活性物質に見出される有用なヘテロ芳香環であるキナゾリンの効率的な合成法の開発へと展開し、これまで達成されていなかった興味深い構造を有するキナゾリン誘導体を合成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
高分子内包型金ナノクラスター触媒によるアリルアルコールの酸素酸化とキラルRh/Agナノクラスター触媒による、生成したエノンへのアリールボロン酸の1,4付加による不斉炭素―炭素結合形成反応の時間的反応集積化を達成することができた。しかしながら、本反応を同一時空間反応集積化によって行うと、金ナノクラスター触媒と酸素によるアリールボロン酸のホモカップリング反応と、Rh/Ag触媒によるアリルアルコールのケトンへの異性化反応が進行してしまい、目的の反応を効率的に行うことができなかった。そこで、空間的反応集積化への適用を行い、より効率的な反応系の構築を行う。一方、Pt/Irナノクラスターとカテコールによる協調触媒系を用いた酸化的キナゾリン誘導体合成反応と、これまでに開発したPtナノクラスター触媒による、分子状酸素を酸化剤として用いたベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール合成反応を集積化することにより様々なヘテロ芳香環ダイマーやオリゴマー、ポリマーの合成反応を開発し、これらの化合物のライブラリーの構築を行う。
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