申請者らは昨年度、低毒性かつ安価なトリホスゲンと塩基からホスゲンを発生させて、カルボン酸を活性化し、さらにこれをアミノ酸と反応させることによりペプチドを合成する手法を確立した。今年度はこの手法の論文発表に向けたデータ収集、連結困難なアミノ酸を用いたペプチド合成の検討を中心に実施した。 (1)論文発表に向けたバッチ条件での対照データの取得:これまで、バッチ系での検討が未実施であったため、マイクロフロー合成法の対照実験として、活性化時間、アミド化時間をそれぞれ30秒に設定し、同一濃度の基質を用いて反応を実施した。なお、反応時間はこれ以上短縮すると、再現性が低下することを確かめている。その結果、すべての基質の組み合わせにおいて、バッチ条件のほうがマイクロフロー条件に比べて収率が低下することが判明した。(2)二残基のペプチド同士のカップリング検討:昨年度までの検討では二残基のペプチド同士のカップリングを未実施であったため、確立したマイクロフローペプチド合成法の有用性を実証するため、オーリライドのテトラペプチド部位の合成において二残基ペプチド同士のカップリングを検討した。その結果、収率の低下が観察されたものの、エピメリ化を一切起こすこと無く目的のテトラペプチドを得られることを確認した。(3)4‐ヒドロキシフェニルグリシンの連結:生理活性天然物の中にはヒドロキシフェニルグリシンを持つ化合物が知られている。ヒドロキシフェニルグリシンはエピメリ化を起こしやすいため、その連結は困難なことが多い。我々が確立したマイクロフローペプチド合成法を適用したところ、滞留時間を0.5秒、温度を10 oCとした時に収率82%、エピメリ化1%で目的物を得ることに成功した。
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