研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106712
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村井 利昭 岐阜大学, 工学部, 教授 (70166239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | チオカルボニル / 連続付加 / チオホルムエステル / Grignard反応剤 / アリールスルファン |
研究実績の概要 |
カルボニル同族体であるチオカルボニル基を鍵化合物あるいは鍵中間体として、様々な反応剤を連続して付加させる多成分連結反応3)を開拓する中で、チオホルムエステルに対するGrignard反応剤の連続付加をバッチ式ならびにフロー系で行い、高い効率でアリールスルフィドやその誘導体を導く系の構築を目指した。 チオホルムエステルに対して過剰のアリールGrignardを加え、しばらく撹拌を行い、さらに加水分解をした。バッチ式の反応では、トルエンまたはジエチルエーテルを溶媒として用い、水で処理した際にはアリールスルフィドを良好な収率で与えた。反応はGrignardが、チオホルムエステルのチオカルボニル炭素上に攻撃し、さらにROMgBrが脱離することでチオアリールアルデヒドを与え、ついでもう一分子のGrignardがチオアリールアルデヒドのチオカルボニル硫黄上に攻撃して進行すること思われる。ここで水処理をする前に、様々な親電子剤を加えると系中で発生するベンジルGrignard のベンジル炭素上に様々な置換基が組込まれた化合物、たとえば1-フェニル-2-フェニルサルファニル-3-ヒドロキシアルカンやホモアリルスルファンを与えた。ただしこの段階での反応時間は親電子剤に依存していた。カルボニル化合物への付加は速やかに進行する一方で、ハロゲン化ベンジルとの反応は5時間程度を要した。さらに同様の反応をフロー系でも検討を行った。その結果、THFを溶媒として用いた場合には、バッチ式で得られた生成物は得られず、系中で発生したベンジルGrignardがチオホルムエステルへ付加したヘミチオアセタールを主生成物として与えた。なおヘミチオアセタールはX線回折によって、その構造を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、フロー系を用いた反応で、チオカルボニル化合物に対する連続付加を、高い効率でしかも迅速に完了できる系の構築を目指していた。ある程度の成果を得ていたものの、そこで最適化できた条件で、バッチ式の反応を行ったところ、ほぼ同様の結果、あるいはそれ以上の効率で期待の反応が進行することがわかった。すなわち本研究では、フローマイクロリアクターを用いた系で反応探索を行い、それによって得られた成果をもとにバッチ式で合成するという従来の流れとは、むしろ逆の流れの研究展開になっている。とりわけチオホルムエステルへのアリールGrignardの付加が、30秒以内に完結することは、当初はまったく予想していなかった。一方で系中で発生できる、いわゆるベンジルGrignardのハロゲン化ベンジルなどへの付加に時間を要することは予測していなかった。今後はその反応時間の短縮化も含めたフロー系での反応開発を再び行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
一連の研究の中で、チオホルムエステルに対する連続付加反応の全体像を明らかにすることができた。この成果を基に、今後は、プロダクトベースの研究、すなわち新奇な骨格を有する化合物群を指向し、硫黄原子が組込まれている特徴を生かした機能性分子の開拓を行う。とりわけ、紫外光の吸収と高い屈折率を有する化合物群の構築をめざす。
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