研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106713
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北村 雅人 名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (50169885)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脱水型アリル化 / 不斉反応 / ルテニウム / 遷移金属錯体触媒 |
研究実績の概要 |
「レドックス介在型ドナー・アクセプター二官能性機能触媒(DACat)」の指導原理のもとに開発した,「ブレンステッド酸とモノカチオン性CpRuII錯体の混合触媒」はアルコール類をアリルアルコール(AllOH)を用いて脱水的にアリル化することができる.この化学を起点に、その不斉反応化を目指した.とくに,ブレンステッド酸にキノリン-2-カルボン酸(QAH)を用いるCpRuQAH触媒の不斉化に照準を置き,i)キラル配位子ライブラリーの構築,ii)触媒構造活性・選択性相関調査,iii)基質汎用性の調査,の3点に焦点を置いた. CpRuQAHのキラル錯体化に向けて,QAHをR-Naph-PyCOOH(5-methyl-6-(2-R-naphthalen-1-yl)pyridine-2-carboxylic acid)を設計し,これら一連のキラル配位子の一般不斉合成法を確立した.このキラル配位子は,軸性キラリティをもち,立体的な柔軟性を特徴とする.標準反応にω-ヒドロキシアリルアルコールの分子内不斉Oアリル化を取り上げ,不斉触媒機能を調査した結果,[CpRuII(CH3CN)3]PF6とCl-Naph-PyCOOHあるいはCl-Naph-PyCOOAll(All: CH2CH=CH2)が高い反応性・選択性・生産性を有することを見いだした.この不斉Tsuji-Trost型Oアリル化反応を用いて様々な光学活性環状エーテル合成に展開するとともに,プロトン性求核基をヒドロキシ基からアミド基に変換することもできることを確認した. 本法は,従来の「脱塩型プロセス」を「脱水型プロセス」に置き換えるものであり,環境問題や資源枯渇が顕在化する現在において,その意義は大きい.本法で得られる「光学活性飽和へテロ環状化合物」は有用生理活性物質の不斉合成における光学活性シントンとして活用されると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ピリジンカルボン酸を基本骨格にもつ光学活性配位子「R-Naph-PyCOOH」の、R基にCH3,C6H5,OCH3,Cl,Brを有する一連の配位子の系統的合成法を確立するとともに、それらのR置換基に応じた立体化学的安定性の違いを定量的に求め,OCH3体以外は光学活性配位子として利用できることを示した.これらの配位子ライブラリを基盤に、世界に先駆けて脱水型不斉アリルエーテル合成法の確立に成功した。基質汎用性もたかく、光学活性テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クロマンやクマランに加えて、様々なアミドの分子内アリル化によるN-複素環合成にも展開できることを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度確立した脱水型アリル化反応について、iv) 有用物質合成への応用、v) 反応機構解明に焦点を置く。iv)に関しては、環状エーテル、アミン、などを基本骨格とする生理活性天然有機化合物を取り上げ、「脱水型不斉アリル化/Grubbsアリルアルコール合成」プロトコールと「アセタール、炭酸、カルバミン酸等を有するアリルアルコールの不斉環化を基軸とする連続的1,2および1,3立体制御」に基づく集積合成を実現する。1バッチ無精製合成が可能な本法の集積合成への適用性は極めて高い。v) では、速度論実験・速度式解析、重原子標識実験、同位体効果測定を中心に触媒機構を把握し、NMRやX線回折実験から得られる、観測ないし単離可能な関連錯体の構造化学的情報をもとにエナンチオ選択機構を理解する。本触媒の高性能化の糧としたい。
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