公募研究
ホスホールオキシドは,ホスホリル基の電子求引性に起因してヘテロール類の中でも極めて高い電子受容性をもち,π共役系の基本骨格として近年活発に研究されている.最近我々は,リン置換フェニルアセチレンの分子内環化を含む時間的反応集積化により,周辺修飾型ベンゾホスホールオキシドの合成法を確立した1.本法により得られる3-ハロベンゾホスホールオキシドは,さらなるハロゲン–金属交換反応やクロスカップリング反応のよい前駆体であり,所望の位置に種々のアリール基や官能基をもつベンゾホスホールオキシドへと誘導可能である.本研究では,この時間的反応集積化を鍵として,種々の発光性材料の開発に取り組んだ.第一に,2位に電子供与性アリール基をもつ種々のドナー・アクセプター型ベンゾホスホールオキシドを合成し,得られた化合物群の発光特性について調べた.その結果,いずれの化合物も溶媒の極性が増大するにつれ蛍光波長の顕著な長波長シフトが観測された.蛍光量子収率の溶媒効果は電子供与性アリール基の置換位置に強く依存し,2位に4-アミノフェニル基をもつ誘導体1および 2は,溶媒の極性にかかわらず極めて高い蛍光量子収率をもつことを見出した.さらに,動物細胞の染色実験により,本化合物が単一色素による細胞内環境の染め分けに応用できることを示した.さらに,2位にo-ヒドロキシフェニル基を有するベンゾホスホールオキシド誘導体 3 を合成し,これらの発光特性が溶媒の水素結合供与能に応答して著しく変化することを明らかにした.ホスホリル基の水素結合形成能が発光特性のスイッチングに応用できることを示す結果である.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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