研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106717
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大江 浩一 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90213636)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 金触媒 / π活性化 / σ活性化 / 環化異性化 / ピリジンN-オキシド / インドリジノン / カスケード型反応 |
研究実績の概要 |
炭素-炭素多重結合のπ活性化能とカルボニル基等のσ活性化(ハードな活性化)能を有する第11族の金触媒に着目し,それを利用したカスケード型複素環構築法の開発に取組んだ。 分子内にピリジンN-オキシドを有するプロパルギル型アルキンに対して,室温で一価の金触媒AuCl(PtBu3)とAgSbF6(いずれもアルキンに対して5 mol%)を作用させたところ,酸素原子とエステル部分の転位により生じたピリジルエノンとともに環化異性化によるインドリジノンが得られることを見出した。また、反応温度を50 ℃に設定するとインドリジノンが主生成物として得られた。この反応の詳細な調査を行い,金触媒がどのように触媒反応の同一時空間集積化に寄与しているかを明らかにした。 一価および三価の中性金触媒では,ピリジルエノンとインドリジノンの収率は低下した。また,AgSbF6の共存下のカチオン性一価Au触媒を発生させる条件では,PtBu3配位子が最も効果的な配位子であった。さらに,反応温度を80 ℃にすることでインドリジノンの選択性と収率が向上した。 次に、ピリジンN-オキシド部分を含むアルキンの基質適用範囲を検討し、安息香酸エステルの他に酢酸やピバル酸エステルが利用できることを明らかにした。また,反応は、内部アルキンで効率よく進行した。さらに,同反応により三環性のインドリジノンが生成することもわかった。 これらの結果より,ピリジンN-オキシドの酸素原子の転位によりα-ケトカルベンが発生し,続くカルベン中心へのアシルオキシ基の転位による(E)-ピリジルエノンの生成と,同じAu触媒がハードルイス酸としてカルボニル基を活性化して続く環化異性化を促進しインドリジンを与えたと結論づけ、金触媒の炭素-炭素多重結合のπ活性化能とカルボニル基のσ活性化能を利用したカスケード型複素環構築法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環化異性化反応は,原子効率性に優れた環状化合物の有力な合成法の一つである。本研究では,有機基質の触媒的縮合反応と続く環化異性化反応の同一時空間集積化による新規複素環合成について研究を行い,異種複素環オリゴマーや芳香族複素環共役化合物の効率的合成法を開発した。 炭素-炭素多重結合のπ活性化能とカルボニル基等のσ活性化(ハードな活性化)能を有する第11族の金触媒に着目し,それを利用したカスケード型複素環構築法の開発にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、様々な有機不飽和活性種の新規効率的発生法の開発と遷移金属のデュアル触媒機能を組合わせた同一時空間集積化に基づくカスケード型触媒反応の創成を目指す。銅と同じ11族の金触媒のデュアル触媒機能に着目し、それを利用したカスケード型複素環構築法の開発ならびにパラジウム触媒による小員環複素環合成とそれを応用したカスケード型複素環合成法を確立するとともに、以下の4つの発展を目指す。1. マイクロフローシステムを利用した3段階反応の集積化、2. [3+2]環化 付加反応によるシクラジン類縁体の合成、3. 気液二相型マイクロフローシステムを利用したカルボニル化反応 の集積化、4. 新たなタンデム型反応の調査 アルキンをつなぐ鎖長の調整によりできる環サイズや活性種のタイプを変えることもできる。また,含窒素環状化合物は生理活性物質として有用であり,共同研究の可能性も積極的に探りたい。
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