24年度までに、Tf2NHを触媒として用いる反応機構の異なる3つの触媒反応を時間集積することに成功し、単純な原料から一挙に高次分子骨格を構築することを可能とした。即ち、1)シクロペンテノンとシロキシジエンとの(4+2)環化付加、2)環化付加体の熱力学的に安定なシリルエノールエーテルへの異性化、3)異性化体とアクリル酸メチルとの(2+2)環化付加である。このようにして異なる3種の単純な化合物群からわずか1工程で三環性化合物が得ることができる。ここで得られる三環性骨格はセスキテルペンのプロトイルダン骨格に類似しており、パエスレリンの予想構造が合成できると考えた。 5員環のカルボニル基をあしがかりとして、6員環上に酸素官能基を導入することを検討したが、低収率な行程を含むことから異なるルートを再検討することとした。 次に、第三級ヒドロキシ基に導入した配向基を足掛かりとして、不活性C–H結合へのカルベン挿入反応を検討した。誘導したジアゾエステルに対し、ロジウム触媒を用いたカルベン挿入反応は効率的に進行し、炭素鎖導入に成功した。その後数工程の変換により一炭素減炭を行いエキソアルケンに導いた。エンドアルケンへの異性化は極めて困難であったが、Crabetree触媒を用いることで異性化後脱保護することで目的の変換できた。ここで得られた化合物は野副らにより単離が報告されているプロトイルデノールであり、既報のスペクトルデータと一致することを確認した。さらに、これをアセチル化し所望の化合物に変換した。合成品のNMRデータは天然物のそれとよく一致したことから、パエスレリンAの真の構造が明らかとなった。
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