研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106720
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大野 浩章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30322192)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 反応集積化 / 原子効率 / 多環式芳香環 / アルカロイド / 遷移金属触媒 / キナーゼ阻害剤 |
研究実績の概要 |
反応基質に含まれる原子を無駄にしない触媒的原子移動型反応を集積化することは、有機合成の効率化を高度に実現する重要な手段となる。報告者は本研究課題において、原子移動型反応の高度集積化による多環式化合物の構築と創薬展開に取り組んでいる。平成24年度においては、以下に略述する研究成果を得た。 (1) 同一時空間反応集積化を基盤とした金触媒によるナフタレン骨格の構築:最近報告者らが見出した縮環型カルバゾール骨格の一挙構築法を基盤として、外部求核剤を用いたアルキンへの分子間求核付加を契機としたジイニルベンゼンの芳香環化反応を検討した。その結果、末端アルキンに対する外部求核剤の位置選択的付加と6-endo-dig型環化反応が効率よく進行し、対応する1,3-二置換ナフタレンが良好な収率で得られることを見出した。反応にトリイン誘導体を用いると、分子間求核付加に引き続く二連続ヒドロアリール化が進行することも併せて見出した。 (2) 同一時空間反応集積化を基盤としたCK2阻害剤の開発:金触媒を用いた独自の三成分ピラゾール合成法を利用して、最近報告者が独自に見出したフェニルピラゾール誘導体をリードとするピラゾロインドール誘導体を合成し、CK2阻害活性の評価を行った。その結果、良好なCK2阻害活性を有する二種の候補化合物を見出すことに成功した。 (3) 時間的反応集積化を利用したQuinocarcinの全合成:時間的集積化がジヒドロベンゾフラン環の開裂反応の進行に極めて重要であることを見出した。本反応を利用して、Quinocarcinの全合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、ジインを用いた分子間求核付加・環化反応集積化によるナフタレンの合成とクリセンの合成に成功し、天然アルカロイドの全合成を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に開発した分子間求核付加反応・多連続ヒドロアリール化反応の集積化に関する研究成果を基盤として、インドールアルカロイド型骨格の一挙構築反応を検討する。様々な原子移動型反応の集積化を行えば、合成容易な基質から複雑な構造を有するアルカロイドの基本骨格を効率よく一挙に構築できる可能性がある。平成25年度の本研究においては、トリイン構造を有するアニリンやイナミドを用いたcommunesin類等のアルカロイド骨格の一挙構築を試みるとともに、多環芳香族炭化水素 (polyaromatic hydrocarbons; PAHs) の合成を検討する。
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