研究概要 |
有機エレクトロニクスの進歩に伴い、縮合多環パイ共役系分子の有用性が益々高まっている。本研究の目的は、「交差カップリング反応の多重集積化を基盤とする合成反応」を開発することにより、縮合多環パイ電子共役系の精密合成法を開拓することである。今年度は、まず、ジボリル化合物の二重交差カップリングを基盤とする環形成法の新たな展開として、1-アルキニル-2-(ジブロモエテニル)アレーンを求電子剤とする縮合ペンタレンの簡便合成法の開発に取り組んだ。ジボリル反応剤として 1,2-ジボリルスチルベンを、求電子剤として1-フェニルエチニル-2-(2,2-ジブロモエテニル)ベンゼンを選び、条件検討をおこなった。その結果、塩化パラジウム 10 mol% 存在下、配位子としてトリフェニルホスフィン 40 mol%、塩基としてリン酸三カリウム 6当量を用い、溶媒THF中で60 °C に加熱すると、目的のベンゾペンタレンが修理よく得られることを明らかにした。同条件を用いて、ジボリルアルケンやジブロモ化合物に電子求引基・電子供与基を導入しても、反応は中程度から良好な収率で進行した。 これまでにジボリル化合物と2,2′-ジブロモビアリールとの二重交差カップリング反応を開発している。入手容易なジブロモビアリールの多くは対称体に限られるので、二重交差カップリングを利用して合成できる縮合多環パイ共役系のバリエーション拡大を目指して、環状ヨードニウム塩を求電子剤とするカップリング反応を検討し、酢酸パラジウムを触媒を用いることにより目的とする環化反応が円滑に進行し、非対称型環化体が中程度ないし良好な収率で生成することを明らかにした。
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