研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106725
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
馬場 章夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 理事 (20144438)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機合成化学 |
研究実績の概要 |
有機金属は現代化学に必須の化合物であり、その合成と利用について多くの研究が行われてきた。有機金属の合成は、有機ハロゲン化物の低原子価金属への酸化的付加、金属交換、脱プロトン金属化や不飽和結合へのヒドロメタル化等があるが、有機金属化合物(Mt-R)の不飽和結合への付加(カルボメタル化)は炭素-炭素結合形成(増炭)を伴った有機金属合成法として重要な位置を占める。しかし、多くの制限があり、新たな反応形式の開発が急務となっている。本研究では、金属塩を直接利用する新規カルボメタル化とそれを鍵とする時間的集積化反応の開発を提案する。本手法が確立できれば、有機金属の事前調製が回避できることから多様な官能基の導入も可能となり、複雑な化合物をワンポット手法で簡便・迅速に合成可能となる。 臭化ビスマスとシリルケテンアセタールを用いたアルキンへのカルボビスマス化を達成し、さらにアルケニルビスマスの新規合成法とそのカップリング反応等の時間的集積化への展開を行った。1) 炭素-炭素不飽和結合へのカルボビスマス化は本反応系が初めての例である。様々なアルキンとケテンシリルアセタールが適用可能であり、エステル部位を有するアルケニルビスマスの簡便な合成法を確立した。合成したアルケニルビスマスのX線結晶構造解析により、カルボビスマス化が位置・立体選択的に進行していることを実証した。また、合成したアルケニルビスマスを用いたパラジウム触媒による酸クロリドとのカップリング反応と、アルケニルビスマスのヨウ化物もしくは硫化物への変換反応を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、臭化ビスマスとケテンシリルアセタールを直接用いたアルキンへのカルボビスマス化を達成した。さらにカルボビスマス化とパラジウム触媒カップリング反応の時間的集積化に成功し、多官能性のエノンの短工程合成法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
アルキンへのカルボビスマス化による知見を活かして、他の金属塩への展開を中心課題とする。あわせて、不飽和化合物、求核種、カップリングパートナーである求電子種の組み合わせの検討を行い、新しい金属塩の反応系の特性を調査する。 (金属塩)ソフトなルイス酸性を有するZnX2が有力候補となると予想している。これらの金属塩はインジウム塩と同様の性質を有していることが申請者の以前の研究から明らかとなっているため、反応系を確立できる可能性は非常に高い。 合わせて、汎用で安価な金属であるFeX3とCuXの適用を目指して工夫する。条件や添加物、および反応試剤を根本的に変更して、何としても突破口を開きたいと考えている。 (不飽和化合物)アルキン以外にアルケン、アレン、ジエンやメチレンシクロプロパンなどの不飽和化合物の検討を行う。 (求核種)前年度に確立した臭化ビスマスを用いた反応系において有効であった求核種を用いる予定である。アリル、アルキニル求核種やシアニド求核種が候補となる。ケイ素誘導体に加えて、応募者の研究室で蓄積のあるスズ化合物も試みる予定である。
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