本研究では複数の反応点を有するπユニットを連結する際に、電気のオン・オフのスイッチングをファクターとして逐次的に反応点を切り換えることにより、反応を集積化し(時間的集積化)、複数のπユニットを任意に連続的に連結した拡張π電子系分子を構築することを目的とする。昨年度までに、複数の反応点を有する基質の反応点を電気のオン・オフによって切り換える手法を確立し、π拡張ジイン、π拡張アルキン、テトラアレーンの合成を確立すると共に、得られた両末端にジメチルアミノ基を有するビス(ビアリール)ブタジエンが全く対称な非極性分子であるにもかかわらず蛍光ソルバトクロミズムを示すことを明らかとした。平成25年度は基質一般性の拡張をめざし、特にジイン合成反応の基質適用範囲を拡張しヘテロアリール基としてベンゾチオフェン骨格を導入することと、得られたπ拡張ジインの分子変換、それら拡張π電子系分子の物性評価を目的とした。また蛍光ソルバトクロミズムの構造物性相関についても精査した。 連続的カップリング反応として、電気化学的な3-ブロモ-2-エチニルベンゾチオフェンの酸化的ホモカップリング反応を一段階目(スイッチON)、それに引き続く非通電条件下でのアリールボロン酸との鈴木-宮浦反応(スイッチOFF)を二段階目とする時間集積型反応を開発した。 昨年度見いだした蛍光ソルバトクロミズムを示すアミノ基を導入したπ拡張ジインについては、種々の誘導体を合成すると共に、アルキン鎖長の異なる類縁体の合成も行い、分子構造と蛍光ソルバトクロミズムの相関についての検討も行なった。アルキン鎖長の異なる誘導体を合成したところ、アルキンがないテトラアレーンでも、蛍光ソルバトクロミズムを示すが、アルキン鎖長が伸長するにつれ、溶媒による蛍光波長の変化が顕著になることが明らかとなった。
|