研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106741
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
勝村 成雄 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70047364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 反応集積化合成法 / ワンポット共役γ-イリデンブテノリド合成 / カロテノイド・ペリジニン / 海洋光合成初期過程 / 共役短鎖長ペリジニン類縁体合成 / 新規エネルギー準位・SICT / ペリジニンのイリデンブテノリドシフト類縁体 |
研究実績の概要 |
触媒的な炭素-炭素結合形成と複素環形成を集積化させ、sp2-sp カップリングに続く分子内ラクトン化をワンポットで行うと、共役γ-イリデンブテノリドの効率よい立体選択的合成が可能となる。海洋光合成初期過程において超効率的エネルギー伝達能を示し、この特徴的官能基を有するカロテノイド、ペリジニンの特異な機能を解明するため、以下の3つの課題を検討した。1.短鎖ペリジニン類縁体の合成:既に我々は、薗頭カップリングと分子内ラクトン化反応を集積化させ、γ-イリデンブテノリドの高立体選択的合成法を見出している。この合成法を用い、短い共役鎖長のペリジニン類縁体のワンポット合成を実現した。この分子は、機能解明の鍵となる新規エネルギー準位、SICT準位(intramolecular charge transfer state)の特異な性質解明に、極めて有効であることが期待される。2.イリデンブテノリド環を中央へシフトさせた類縁体合成:ペリジニンの持つイリデンブテノリド基は励起状態で顕著な電荷移動状態を引き起こし、その結果としてSICT準位が誘起されると言われている。この推定を実証するため、イリデンブテノリド環を分子のほぼ中央へ移動させた類縁体をデザインし、合成した。すなわち、新規なブテノリド等価体を開発し、それを用いて1.と同様な手法により達成した。また分光学計測により、この官能基の本質的な重要性を示した。3.ビファンクショナルシントン開発の検討:3成分連結ワンポットでのペリジニン類縁体合成を目指し、ビニルブロミド、アセチレン、エステルを持ったシントンの開発を試みたが成功に至らなかった。今後さらに、この集積化合成法を検討する。一方、両端にホウ素とスズを持つ既知のジエンを合成し、その一酸化炭素挿入反応を検討したが、このシントンは期待した反応性を持たないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海洋光合成初期過程における超効率的エネルギー伝達の鍵となる新規エネルギー準位であるSICTの性質解明に向け、重要な類縁体として共役短鎖長ペリジニン類縁体およびペリジニンのイリデンブテノリドシフト類縁体のワンポット合成を実現したが、この合成に思いのほか時間がかかった。このため、3成分連結ワンポットペリジニン合成の鍵となる両官能性シントン合成の検討が不十分であった。また、既知の両官能性ジエンシントンの反応性が予想外に悪いことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果を踏まえ、3成分連結ワンポットペリジニン合成の鍵となるイリデンブテノリド等価体シントンの合成を様々な角度から検討し、これを実現させたい。その後に、最初の計画に従って、ペリジニンおよびその短鎖類縁体の反応集積化ワンポット合成を図る。反応集積化フコキサンチン合成に関しては、このカロテノイドと共役鎖長が等しく同様な機能が期待されるパラセントロンに焦点を当て、Pd触媒によるカップリング反応に適した両官能性シントンの開発と、それを用いた反応集積化ワンポット合成を検討する。
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