研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106744
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
魚住 泰広 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 教授 (90201954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロリアクター / 固定化触媒 / 高速化触媒 / フロー・リアクタ / 膜触媒 |
研究実績の概要 |
平成24年度には「触媒膜導入マイクロ流路反応デバイスの創製」を目的とし申請書研究計画に則って研究を推進した。 (1)機能性高分子固定化不斉触媒を創製しその連続反応デバイスへの導入を実施した。具体的にはビオロゲンポリマーとの多価不斉配位子から高分子塩形成を検討した。本触媒創製によって汎用性に富むカップリング反応の不均一条件での不斉触媒化を実現し高い選択性と一般性を確認した。連続反応デバイスへの展開においても高度選択性を保ちつつ反応が連続的に進行した。平成24年度内に於ける反応実施例数は限定的であった。 (2)マイクロ流路デバイス内での金属ナノ触媒膜形成によるフロー化学合成デバイスの創製を実現した。すなわちマイクロ流路層流界面上での錯体触媒・金属塩触媒の「ship-in-a-bottle」形成手法を利用しポリピリジニウムカチオンと遷移金属多価アニオンとから創製しうる高分子錯体を流路内で膜形成・固定化し,さらに同錯体を還元分解することで金属ナノ触媒膜を創製した。ナノ触媒導入によって秒単位の保持時間で完結するハロゲン化芳香族化合物に対する水素化脱ハロゲン化反応を実現した。 (3)加えてアリル位置換反応,Heck反応,さらに酸塩基触媒膜の形成を経て,酸触媒プロセスのマイクロ流路デバイス創製の検討を開始した。なかでも高分子性プロトン酸触媒膜のマイクロ流路内固定化に成功し,そのマイクロ流路デバイスを用いる事でカルボニル基のアセタール化やカルボン酸類のエステル化のインスタント実施に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 研究計画に掲げた全検討項目にわたり実験研究を推進し,いずれも良好な成果をあげつつある。ただし連続型不斉触媒反応では実施例が現時点で限定的であり,フロー反応システムへの展開では一般性の確立・確認を必要とする段階である。 一方,当初計画以上に高分子プロトン酸触媒膜の創製と応用に成果が上がっている。これら2点の進捗を勘案し達成度を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は不斉触媒系のフロー化に注力する。すなわち申請者は世界に先駆けてマイクロ流路反応デバイスの層流界面において配位性高分子錯体膜触媒を導入する「ship-in-a-bottle」手法を開発している。この「ship-in-a-bottle」手法を不均一不斉触媒に適用することで不斉触媒膜導入マイクロ反応デバイスが構築でき,多くの基質を用いた不斉反応に適用できる。 加えてナノ触媒膜の流路導入も順調に進みつつある。既に触媒反応に適用済みであり,さらに酸化型反応にと展開を深める。特にプロトン酸触媒は既にのマイクロ流路反応システムに適用済みであり,今後論文作製に向けた詳細なデータのブラッシュアップを推進する。ナノ粒子触媒は触媒創製,流路内導入,触媒反応展開を終え,さらに論文も発表した。さらなる適用反応の拡充を進める。
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