不斉触媒反応は光学活性ビルディングブロックを供給する上で最も合理的かつ効率の高い合成法を提供する。実質的に触媒量低減化に繋がる方法論として固相担持等による再利用可能型不均一系触媒とする手法があるが,立体制御の不要な単純な反応系においては幅広く不均一系触媒が開発されている一方で,触媒的不斉反応においては実用性を伴う例に乏しいのが現状である。本年度我々は,既に開発していたNd/Na異種2核金属触媒の特異な自己組織化特性を利用して簡便な不斉触媒の固定化法を探索し,触媒活性や立体選択性の低下を伴わない不均一系触媒の形成法を確立するとともに連続フロー反応への適用を目指すこととした。 高付加価値の不斉触媒反応の連続フロー合成形式による実施を志向し,新規カーボンナノチューブ固定化触媒の創製に至った。アミド型不斉配位子1,NdO1/5(OiPr)13/5,NaHMDSから調製される触媒は,異種2核金属不均一触媒としてanti選択的触媒的不斉ニトロアルドール反応を効率的に促進する。本触媒は自己組織化により不溶性の不均一触媒を形成する。この自己組織化過程を微細網目状ネットワークを有する高アスペクト比の多層カーボンナノチューブ(MWNT)共存下に行う事で,微細な触媒クラスターがMWNT中に高分散されると同時に固定化され,触媒表面積の増大により触媒活性が大幅に上昇した再利用可能型触媒を与える事がわかった。連続フロー反応への適用で,立体選択性を維持したままにbatch反応を越えるTONが観測された。
|