研究領域 | 反応集積化の合成化学 革新的手法の開拓と有機物質創成への展開 |
研究課題/領域番号 |
24106746
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
三木 一司 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (30354335)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 近接場 / 光化学 / 流体デバイス |
研究実績の概要 |
脂質二重膜に見られるような疎水場では分子の取り込みや輸送が効率良く行われることが一般的に知られている。長鎖のアルキル鎖に代表されるような単純な置換基であっても、高密度に集積化させれば疎水場として機能することが知られており、ドラッグデリバリーや超分子組織体構築において盛んに利用されている。本研究提案においても、同様のアルキル基を集積化させた疎水場を金ナノ粒子表面に構築することで効率的に光触媒反応を促進するための反応場として利用できるのではないかと考えている。この着想が実現するためには、アルキル置換基によって構築された疎水場内部に基質が取り込まれるだけでなく、疎水場内部で反応した生成物が効率よく疎水場から排出されなければならない。我々は金ナノ粒子2次元配列を用いた触媒反応研究の過程において、本研究で提案する疎水反応場と類似したアルカンチオールによって構築される疎水反応場が金表面の触媒反応を非常に効率よく進行させる反応場として寄与することを見出した。以下、触媒反応で明らかになった事を述べる。 我々は、直径10ナノメートルの金ナノ粒子をアルカンチオール分子で表面修飾した構造を用いることで金属酵素を模倣したモデル触媒構造を作製したアルカンチオール自己組織化単層膜が内部の疎水空間に反応物質を取り込み、触媒である金ナノ粒子表面に反応物質を近づけることで触媒反応が効率良く進行することを見出した。具体的には、シラン分子とアルコール分子からシラノール分子を生成する反応(アルコホリシス反応)が新型触媒により加速されることを実証した。新型触媒はタンパク質と同様に、反応物質の長さやサイズを認識する機能を持つ。触媒表面のアルカンチオールとほぼ同じ長さの反応物質が最も高い活性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の成果は、金ナノ粒子表面を使って基質取り込み機能を模倣することに成功した初めての例であり、特定の分子を選択的に取り込む機能を完全に獲得した近接場光化学反応を実現するためのブレークスルーとなり、エナンチオ選択性や、より複雑な反応場への応用展開が期待される。この事は研究目的に沿った成果で有る事から、概ね順調に進展していると判断しました。
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今後の研究の推進方策 |
(課題1)タンデム光反応用流体デバイスの開発 初年度に引き続き耐溶媒性の高いマイクロ流路の作製法を探索するとともに、複数溶液合成用タンデムマイクロ流路の開発を行う。前年度の試作で高分子樹脂材料利用での探索は難しい事が分かったので、流路材料を石英に切り替える。幅と深さがそれぞれ100-200μm、50-100μm、になるように、流路パターンの形成を行う。流路部分には、流路形成用のリソグラフィ、ドライエッチング後に、流路部分へ金薄膜を蒸着し、その金薄膜表面上に、我々が独自に開発したハイブリッド自己組織化法を用いて、金ナノ粒子のSAM膜(2次元配列膜)を形成する。 (課題2)2光子吸収を利用した低エネルギー型タンデム光反応 我々の作製した金ナノ粒子SAMによるプラズモン増強反応場は非常に輝度の高い光源として機能し、2光子吸収過程に基づいて光反応を励起できることがすでに明らかになっている。そこで、2年目の目標として、2光子吸収による光反応をタンデム系に組み込むことで、低エネルギーな光化学反応プロセスの開拓を行う。
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