研究実績の概要 |
機能性核酸を癌疾患治療に応用するには、核酸を機能する場所である癌組織の癌細胞の中にまで届ける必要がある。本研究では癌組織へ効率的に核酸を送達可能なDDSの開発について、以下の研究を行った。 1)新規pH応答性カチオン性脂質の合成とin vitro機能評価 新規pH応答性カチオン性脂質YSK05を合成した。YSK05を含むpH応答性リポソーム(YSK-MEND)は粒子径80nm、siRNAの封入率90%以上、pKaはおよそ6.5であり、初期エンドソームなど弱酸性領域で正に荷電することが示された。in vitroノックダウン活性は従来のシステムと比較し100倍向上し、エンドソーム内の酸性化と正帯電によるエンドソーム膜との膜融合がエンドソーム脱出のメカニズムであることが示唆された(Sato, Hatakeyama, et al. J. Control. Release, 2012) 2)YSK-MENDのin vivo機能評価 YSK-MENDをマウスへ静脈内投与後、肝臓における標的遺伝子のノックダウンにより評価した。その結果、従来のMENDと比較して1/10以下の投与量で肝臓標的遺伝子をノックダウンすることに成功した(論文投稿準備中, 特願2012-11952)。次に、YSK-MENDによるがん組織へのsiRNA送達と標的遺伝子のノックダウンについて評価した。4mg/kgのsiRNA投与量でPEG-MENDを静脈内投与し50-60%程度のノックダウンが確認された。以上より、in vivoがん組織において標的遺伝子をノックダウン可能な全身投与型MENDの構築に成功した(Sakurai, Hatakeyama, et al. Mol Ther, in press)。
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