• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

細胞環境を再現したフェムトリットル空間デバイスの創製とその生化学反応への展開

公募研究

研究領域ナノメディシン分子科学
研究課題/領域番号 24107511
研究機関名古屋大学

研究代表者

加地 範匡  名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90402479)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワードナノバイオデバイス / 細胞 / 生化学反応
研究実績の概要

本研究では、微細加工技術により作製したフェムトリットル空間デバイスが有する空間(具体的には0.1-1 fL(10^-15 L)程度の大きさを有する極微量チャンバー)を利用して擬似的な細胞環境を構築し、細胞環境における分子反応、特に酵素反応のような生化学反応を定量的に理解するための方法論を確立した。
疑似細胞空間として、フォトリソグラフィーにより作製したシリコンマスターからPDMSに極微量チャンバーを転写したものを作製し、PDMSの高い接着性を利用して観察対象溶液をカバーガラスで挟み込んで接合したものを用いた。このマイクロ・ナノチャンバー内には、酵素分子としてβ-galを、基質分子としてFDGを封入し、その発蛍光反応をもとにβ-galの酵素活性を算出した。このような極微量チャンバーを用いた実験では、溶液の漏れや蒸発、酵素分子の壁面への吸着が結果に大きな影響を及ぼすため、これらの要因を取り除いた実験系の構築に注力した。その結果、極微量チャンバーの反応容器サイズの縮小に従って、酵素活性が低下する現象が数fLから500 fL(直径が数百nmから10 umのチャンバー)程度までの間で広く観察された。このような「サイズ効果」が関与していると思われる事象を、より定量的に評価するために、分子クラウディング剤(BSA、PEG8000、PEG20000)を用いて細胞内環境を再現した実験系でも検討を行った。これらの結果を総合的に考えると、極微量チャンバーを用いて細胞内環境を再現するためには、拡散の制限とともに共存する高分子が与える水の活量といったことにまで配慮する必要があることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の当初目標であっフェムトリットル空間デバイスの作製、分子クラウディング剤を用いた細胞環境の再現、サイズ可変極微量チャンバーの試作などが順調に進んだことから、総評としておおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後は、初年度に構築した極微量チャンバー(低吸着材質・サイズ可変)を用いて定量的なデータの取得を行う。また、空間サイズと酵素活性との相関に対して理論的考察を加えるために、極微量チャンバー内におけるプロトン濃度勾配の形成に関する検証を行う。最終的には、細胞環境における分子反応の定量的な理解・考察が可能なフェムトリットル空間デバイスを創製する。
①多角的な視点からのナノ空間における酵素活性理解(プロトン分布の偏りなど)
上述の酵素分子の非特異的吸着以外にも、フェムトリットル空間中でのプロトン分布の偏りが酵素活性の低下を引き起こしているかもしれない。例えば、1 fL((1 #181;m)3)のチャンバー内ではpH=7において60個のプロトンしか存在しないため、比界面積の大きなフェムトリットル空間中においてはプロトン分布に偏りが生じており、pHがバルク中とは異なるという報告もされている。この報告が正しければ、酵素が至適pHの域から外れたため、酵素活性が低下したと考えてもおかしくはない。そこで、この可能性を検証するために、極微量チャンバー内にpH感受性の蛍光色素(SNARF(セミナフトローダフルオール)およびSNAFL(セミナフトフルオレセイン))を封入し、200 nm以下の解像度を有する超解像顕微鏡を用いて、それらのスペクトル分解を行い、チャンバー内のpH分布を検討する。
②細胞環境における高分子相互作用の検証
これらの実験を通して得られたデータをもとに、フェムトリットル空間中でのタンパク質機能に最も大きく影響を与える要因を特定する。さらに、DNA-タンパク質相互作用など、高次の生化学反応を定量的に考察できる系へと発展させることで、高分子相互作用についても検証する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Nanobiodevices for Biomolecule Analysis and Imaging2013

    • 著者名/発表者名
      Takao Yasui, Noritada Kaji and Yoshinobu Baba
    • 雑誌名

      Annual Review of Analytical Chemistry

      巻: 6 ページ: tba

    • DOI

      10.1146/annurev-anchem-062012-092619

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ナノバイオデバイスによる単一DNA分子解析技術の最前線2012

    • 著者名/発表者名
      加地範匡
    • 雑誌名

      化学と工業

      巻: 9 ページ: 65-69

  • [雑誌論文] 超解像顕微鏡とは-Abbeの法則への挑戦-2012

    • 著者名/発表者名
      加地範匡、渡慶次学、馬場嘉信
    • 雑誌名

      現代化学

      巻: 502 ページ: 50-54

  • [学会発表] “大きな技術”で小さな生体分子を視る・操る2012

    • 著者名/発表者名
      加地範匡
    • 学会等名
      さかえサイエンストーク
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2012-10-01
    • 招待講演
  • [学会発表] Micro- and Nanofabricated Structures on a Chip for Biomolecule Analysis in Artificial Intracellular Environments2012

    • 著者名/発表者名
      Noritada Kaji
    • 学会等名
      ISMM2012
    • 発表場所
      Hsinchu, Taiwan
    • 年月日
      2012-06-11
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2018-02-02  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi