研究概要 |
細胞外基質からの信号受容場・伝達経路の機能性を、組換え膜タンパク質を組込んだ脂質膜ベシクル界面に構成することを目的としている。目標は、インテグリン受容体(ITG)経路の開始点に当たる膜タンパク質セットの構成である。昨年度に引き続き、内水相封入を良く制御する界面通過法(張合せ法、droplet-transfer法)により調製した巨大リポソーム(giant unilamellar vesicle, GUV)を標的にバキュロウイルス出芽粒子(budded virus, BV)との融合挙動を、BVを正常粒子と異常粒子に分け検討し、外部pHに関する融合曲線を確定、BVに内在のGP64(融合誘起因子)と同等の応答性を観察した。前年度はR18蛍光染色の解析にとどまっていたが、本年度は、末端に蛍光タンパク質(TagRFP)を融合したGP64(N端)やGPCR(CRHR1,C端)を搭載したBVとの融合も解析、pH 4-5で膜融合が起こり内水相(calceinで染色)も保持されることが認められた。また、同条件でITGB1-TagRFPをGUVに組込めた。同一代表者の科研費(25440045)課題も併せて、本方法の汎用性確認のためADCY6の再構成も試みた。学会未発表だがITGA2、ITGA3の組込み、および、再構成膜解析のためのITGリガンド(GRGDSペプチド)修飾ガラスの作製は、現時点進展中である。一方、今後の研究展開で重要となると思われたことから、一般的製法で今なお有用性が高く、封入効率を高める研究が広くなされている静置水和法により調製したGUVを対象に、内水相へのタンパク質封入の効率化を図った。水和時のpHを目的タンパク質のpIを跨ぎ調節し脂質膜への結合を促すことで、内水相封入の効率化が可能なことを明らかにした。今後、ITGに内部から相互作用するタンパク質因子などの導入に役立つ。
|