研究領域 | ナノメディシン分子科学 |
研究課題/領域番号 |
24107519
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
原田 敦史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50302774)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中空ナノカプセル / 細胞内環境応答 / ヘッド-テイル型ポリカチオン / pH応答性高分子 |
研究実績の概要 |
細胞質の還元環境で薬物放出するナノカプセル:Polyamidoamine dendronとpoly(L-lysine)からなるカチオン性高分子からポリマーベシクルを得た。このベシクル構造を両末端にエポキシ基をもつ化合物による不可逆的安定化、Lys残基側鎖アミノ基へ導入したチオール基間のジスルフィド結合による可逆的安定化を行い、中空ナノカプセルを得た。異なる架橋構造で安定化されたナノカプセルの還元環境下での安定性評価として、ナノカプセルの安定性へのグルタチオン濃度の影響を光散乱強度測定により評価した。不可逆的安定化を行ったものは、グルタチオン濃度の影響は認められなかったが、可逆的安定化を行ったものは、細胞質内グルタチオン濃度での不安定化が確認された。そこで、薬物モデルとしてRhodamine 6Gをナノカプセルに内包させ、ナノカプセルを構成するポリマーをfluoresceinで標識し、細胞への取込と薬物放出の確認をレーザー共焦点顕微鏡観察により行った。不可逆的安定化ナノカプセルではポリマーと薬物モデルが同一の分布を示したが、可逆的安定化ナノカプセルでは、薬物モデルの細胞質への放出が確認された。 エンドソーム内で脱離するpH応答性高分子の合成と特性解析:Polyallyamineに種々無水物を反応させることにより、側鎖構造としてサクシニル(Suc)、グルタリル(Glu)、メチルグルタリル(mGlu)、シクロヘキシル(cHex)構造をもつポリカルボン酸を得た。得られたポリカルボン酸の凝集pHを酸塩基滴定により決定した結果、最も側鎖構造をもつcHexは他のスペーサー構造と比べて高い凝集pHを示した。pH応答特性のチューニングを目的として、cHexとSucあるいはmGluを用い、その導入比率を変化させることにより凝集pHを制御できることが確認された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、基盤となる細胞質内で不安定化するナノカプセルの調製に成功し、その不安定化を細胞内で確認でき、さらにpH応答特性付与のための高分子の合成も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、目的である二段階の動的構造変化惹起を試験管内で確認し、細胞内への効果的な薬物送達に有用な設計であることを実証する。
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