公募研究
ここまでの研究により,四国海盆の半遠洋性堆積物は二回の大きな堆積速度変化イベントを経験していることがわかった.一つは3Ma,もう一つは11Maであり,前者では堆積速度が倍増しているのに対し,後者では堆積速度が半減している.しかしながら,その原因については全く不明であった.これは,いわゆる「半遠洋性堆積物」を運搬しているプロセスが何であるかが未知であるということが,大きな研究上の障害となっていたためである.そこで,今年度は海盆へ堆積物を運搬するプロセスに焦点を当て,研究を行った.四国海盆の半遠洋性堆積物は,詳細に観察すると泥質のタービダイトを多数含んでおり,タービダイトと認定されない層準も実際には生物撹拌により特徴が失われたシルト岩である可能性が高い.すなわち,混濁流の発生頻度が半遠洋性堆積物の堆積速度変化に大きく影響している可能性は高いことがコア観察の結果などから明らかになった.そのため,深海盆へ堆積物を運搬する混濁流の発生頻度を支配する要因が次の課題となる.本研究では,四国海盆で起こっているプロセスのアナログ現象として,2011年東北地方太平洋沖地震直後に発生した混濁流に着目し,詳細な解析を行った.その結果,この混濁流は津波によって発生したことを解明した.この混濁流は浅海域で発生し,日本海溝に至るまで200 km以上にわたってシルト質の細粒堆積物を分散させていたのである.このような細粒堆積物を多く含む混濁流は,南海トラフ巨大地震に伴う津波によって頻繁に四国海盆へも流下したはずである.すなわち,巨大地震発生頻度とシルト質タービダイトの堆積頻度には強い相関があることが予想されるだろう.これは,今後の巨大地震発生帯研究への重要な指針を与える成果と言える.
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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堆積学研究
巻: 72 ページ: 109-113
Geology
巻: 41 ページ: 1195-1198
10.1130/g34777.1
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
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