研究領域 | 超低速ミュオン顕微鏡が拓く物質・生命・素粒子科学のフロンティア |
研究課題/領域番号 |
24108507
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
高阪 勇輔 青山学院大学, 理工学部, 研究員 (60406832)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 磁性 / 物性実験 / 放射線 |
研究概要 |
カイラルな結晶構造を有するカイラル磁性体において、交換相互作用とDM 相互作用が拮抗することにより片巻きのみの単一磁区を有するカイラルらせん磁気構造が自発的に生成される。しかし、カイラル磁性体の候補は少ない上、結晶構造のカイラリティ制御が極めて困難であることが問題となってきた。 申請者らは、種々の新規カイラル磁性体の発見、水溶性無機化合物の新規不斉合成手法の開発等、結晶構造のカイラリティ制御に関する数々の問題点を解決してきた。以下に主な研究成果をまとめる。 (a) カイラル磁性体MnSiのカイラル磁気ソリトン格子の観測 立方晶系カイラル磁性体MnSiの単結晶磁化の温度依存性測定において、Tc付近で鋭いピーク形状の異常が観測された。また、磁場中偏極中性子回折測定において、高次の磁気衛星反射の観測に成功した。これらの実験結果より、カイラル磁気ソリトン格子形成が実験的に観測された。本研究成果は、立方晶系カイラル磁性体においてカイラル磁気ソリトン格子が観測された初めての例であり、今後、他の立方晶系カイラル磁性体でも同様の磁気秩序形成が期待される。 (b) カイラル磁性体CrSiの弱強磁性の観測 MnSiと同じ結晶構造を有するCrSiはこれまで常磁性体と考えられてきた。我々は試料の純良化を推し進めることで本物質が常磁性体では無くTc = 20 Kの弱強磁体であることを、磁化測定及びミュオン測定によって初めて観測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カイラル磁性体CsCuCl3のミュオン測定の実施を行う予定であったが、必要な試料体積が予定よりも多く必要であり十分な量の資料準備のために、平成24年度後期の実施から平成25年度前期と実施時期を延期した。この点を除けば、研究は予定通りに遂行できている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から引き続きカイラル磁性体CsCuCl3の結晶育成を行う。十分な量の単結晶試料が得られ次第、ミュオン測定を実施する。本測定結果からCsCuCl3の結晶構造と磁気構造のカイラリティ結合を実験的に検証する。
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