研究実績の概要 |
まず、これまでに我々がナノ粒子の集積構造を形成した反応条件を制御することで、配位性の官能基を有するナノ粒子の合成を試みた。反応時間を0.1 sオーダで制御することが可能な流通式の反応装置を用い、カテコール構造を有する3,4-dihydroxy- hydroxycinnamic acid(DHCA)の共存下で酸化鉄ナノ粒子を水熱合成した所、約10~20 nmのFe3O4ナノ結晶を合成することに成功した。回分式反応器を用い反応時間を10 minとした時には、約20 nmの粒子が集積した50~500 nm程度の構造が形成されており、反応時間を制御することで、集積構造の1次粒子を得ることができた。この1次粒子は、FTIRによる官能基の結合状態の評価とゼータ電位測定による水中での電位評価により、1つのナノ粒子の表面にDHCA分子が結合し、外側にカルボキシル基を向けていると考えられる。SQUIDにより磁性を評価した所、室温では超常磁性、5 Kでは強磁性を示し、飽和磁化はそれぞれ75.4, 86,7 emu/gであった。この数値は、バルクのマグネタイトとほぼ等しく、負のサイズ効果は現れなかった。 本年度はさらに、多面体ナノ粒子が向きを揃えて配列する過程の観察を行った。これまでに、両端にカルボキシル基を有する直鎖炭化水素の存在下で酸化セリウムナノ粒子を合成すると、正8面体のナノ粒子が結晶方位を揃えて配列した集積構造を形成することを明らかにした。そこで、流通式の反応装置を用い、均熱部を通る反応管の長さを変えることで合成時間を変化させ、その合成過程の変化を明らかにした。その結果、生成した10 nm程度のナノ粒子が、275℃の水中で向きを揃えて複合化し、2次構造を形成する過程を明らかにした。
|