研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
24108705
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
帯刀 陽子 山形大学, 理工学研究科, 助教 (30435763)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 電磁気ナノコイル |
研究実績の概要 |
本研究では、集合状態で高導電性を発現する分子性導体を用い、導電性ナノワイヤ・ナノコイルの開発を行う事を目的とした。更に、得られた1次元組織体の磁気・電気物性を解明し新規機能性材料の開拓を目指す。申請者がこれまでに研究してきた高導電性分子の設計および基板界面制御法を発展させ、幅1分子程度の導電性ナノワイヤ・ナノコイルの創成に挑戦した。 これまでに行ってきた分子集合体ナノワイヤに関する知見から、分子性導体に「かさ高いキラル分子」と「水素結合部位」を導入することで、非対称な側鎖を付与した分子を合成した。分子の両端に異なる相互作用を有する部位を導入することで、螺旋構造を形成すると考えられ、更に、多種アクセプターと組み合わせることで「高導電性ナノワイヤ」を、更には分子性導体の外側にフェロセン分子を結合させることで、直線構造からコイル構造へと変化する「形状記憶導電性コイル」を作成した。このような現象を利用することで、分子1個が変化しコイル全体が伸縮するため、アクチュエーターとしても応用できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機導電性分子からなる分子性ナノ螺旋構造の構築 両親媒性の分子性導体としてこれまでに、膜状態で金属性を示すことが確認されているBEDO-TTF、BEDO-TTF、 [M(dmit)2] (M=Ni, Au)のような分子に、下記4つの特性を付与した分子を合成することで、分子性ナノコイルの創製を目指した。 具体的には、(1)分子性導体部位、(2)キラル鎖部位、(3)水素結合部位、(4)外部応答部位を同一分子内に導入し、ナノ螺旋構造を作製することに成功した。「水素結合部位」と「キラル側鎖部位」は違った結合力でスタックすると考えられるため、分子配列にゆがみが生じ、コイル構造を形成下と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
分子性電磁気ナノコイルの電気-磁気物性評価 ナノデバイスを作成するには、ナノオーダーでの分子集合化に適した環境を整えることが必須である。導電性AFMを用いた電気物性評価は、カーボンナノチューブやDNA など比較的硬い材料については報告され始めているが、分子集合体ナノワイヤのような柔らかい材料の報告例は皆無であった。しかし、近年、PCI-AFM(Point Conduct-Current Imaging AFM)を用いることにより、試料表面にダメージを与えることなく、タッピングモードで形状像と電流像の同時測定が可能となった。本研究ではこの測定法を用いてナノワイヤ1本の電気物性を評価する。ナノコイルの磁気特性は、ナノスケールゆえに微小な磁化であると考えられるため、微小磁場を高感度で検知できるMicro-SQUID システムを用いて測定する。Micro-SQUIDは、細胞や神経のようなナノマテリアルについて測定を行った報告例が幾つかあるだけで、エレクトロニクス素子に関する報告例は殆どない。作製した分子性コイルについて螺旋回転数やピッチを変え、それに伴う機能性の変化を確認する。ピッチの幅を制御することで「形状記憶コイル」を、回転数を制御することで磁場強度が変化する「電磁気ナノコイル」を作成する。以上をまとめると、本研究では、分子性コイルの動的変化による飛躍的な機能変化を利用し、新規ナノデバイスを作成する。これは、磁場存在下で電気が発生することから、電磁気ナノコイルとして機能し、ナノシステムにおけるエネルギー供給源になると期待できる。
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