研究実績の概要 |
本研究では、新規なハイブリッド型金属錯体ナノチューブの構成要素となり得る円筒型有機配位子の合成とその錯形成について検討を行った。一定の径や長さをもつ円筒型分子を合成し、これを配位プログラミング的に複数の金属と錯形成させることで、新規な連結型の金属錯体ナノチューブの合成が可能になると期待される。 前年度までに、大量合成の容易なカリックス[6]アレーンを基本骨格とする円筒型の多座配位子の合成を行ってきた。本年度はこの円筒型配位子の詳細な配座解析を行い、チューブ構造構築のための最適な骨格に関して検討した。その結果、カリックス[6]アレーンのupper rimとlower rimの両方に電子供与性の置換基を導入した誘導体がさまざまな溶媒中でほぼ完全に1,2,3-alternate型の配座のみをとることが明らかとなった。この1,2,3-alternate構造は円筒の両側の開口部に同一の置換基を導入するのに適した構造であり、チューブの構成要素として有用であると考えられる。 また昨年度から新たに、ビスペンチプチセン型円筒状分子の合成も進めてきた。ペンチプチセンは複数の芳香環を剛直な骨格により連結した構造をもつため、変形しにくい円筒状構造を作るのに適している。アントラセン誘導体とベンゾキノンとの反応により、部分骨格となるテトラヒドロキシペンチプチセンを合成した。この分子と各種ジボロン酸の反応により、剛直な円筒状の骨格の形成について検討を行ったところ、ジボロン酸の構造により大環状化合物の生成効率が大きく変わることを見いだした。特に、p-フェニレンジボロン酸やビフェニル-4,4'-ジボロン酸との反応の際に2:2環化体をほぼ定量的に合成できること見いだした。従って、このビスペンチプチセン骨格が円筒構造の環骨格をつくるのに適していることが明らかとなった。
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