両親媒性分子を軸状分子成分、α―シクロデキストリンを環状分子成分とするロタキサン、擬ロタキサンを新たに設計して合成し、その機能を明らかにした。フェロセンを片末端に有するアルキルピリジニウム塩をα―シクロデキストリンと水中で混合することによって、両者が1対1で会合した擬ロタキサンが生成した。その水溶液では2段階の臨界温度が観測され、低濃度では球状ミセルとして、高濃度では筒状ミセルとして会合していることがわかった。さらに高濃度では、会合体の橋かけによってゲルが生成することがわかった。 この擬ロタキサンは末端フェロセニル基を含むことから、その酸化還元挙動を検討したところ、塩化ニトロシルとの反応では酸化によるフェロセニウム生成がおこり、ミセル構造が崩壊することがわかった。これはフェロセニウムの正電荷の分子間反発によって秩序的な配向構造が不安定化したためと理解できる。 かさだかいアリール基とビピリジニウム基とを末端に有する両親媒性分子をパラジウム(II)錯体、α―シクロデキストリンの存在下で混合したところ、α―シクロデキストリンが包接した擬ロタキサンのビピリジニウム部分がパラジウムに結合し、全体で五成分分子からなるロタキサンが生成した。平面四角形を有するパラジウムのシス位にビピリジニウムが配位し、全体はL字型の剛直な分子構造をとることがわかる。このような分子形状をもつにも関わらず、この錯体は水中では会合してミセル及びゲルを形成することがわかった。これは配位子を覆うシクロデキストリンが分子間で相互作用をもつことが原因と考えられる。
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