25年度は1)分子不斉ロタキサンを用いたらせんキラリティー反転システムの構築と、2)化学刺激にかわる外部刺激に応答するロタキサン分子スイッチを開発し、これをポリアセチレンの側鎖に導入して主鎖の有効共役長制御を固相やフィルム状態で達成した。 1)前年度までに分子不斉ロタキサンをポリアセチレン側鎖に導入し、分子不斉からポリアセチレンのらせんキラリティーへのキラリティー転写を達成しているが、さらにらせんキラリティーを随意に反転させられれば、触媒や分離材料への展開が期待される。そこで軸成分の主鎖近傍に点不斉を導入した分子不斉ロタキサンモノマーを合成・ジアステレオ分割し、それぞれのジアステレオマーを重合してポリアセチレンを合成した。つまり点不斉と分子不斉の不斉場が競争的にポリアセチレンのらせんキラリティーを制御する系を検討した。その結果、完全な反転システムには至らなかったが、点不斉中心付近に輪成分が近づくと、ポリアセチレンのらせんキラリティーに対して、分子不斉の効果が顕著になることが示唆されるという結果が得られ、らせん反転システムへの初期的な知見が得られた。 2)熱分解性の対アニオンを有するアンモニウム塩型ロタキサンを合成し、固相で対アニオンを熱分解するとアンモニウム塩がアミンに中和され、これに伴い輪成分が軸上を移動する分子スイッチを合成した。さらに固相で熱分解性の固体酸とアミン型ロタキサンを室温で反応させると、再び輪成分がアンモニウム塩上に局在するアンモニウム塩型ロタキサンとなり、加熱により中和するとアミン型ロタキサンとなる分子スイッチ特性が確かめられた。これを側鎖に有するポリアセチレンを合成し、そのフィルムに対して加熱と酸水溶液への浸漬を順に行ったところ、フィルム状態においても分子スイッチにより輪成分とポリアセチレン主鎖の距離が変化し、主鎖の有効共役長変化に基づく色の変化がみられた。
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