研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
24108716
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉川 浩史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60397453)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子クラスター / 蓄電機能 / グラフェン / ナノ複合体 / 磁気抵抗 |
研究実績の概要 |
複数の金属イオンと有機配位子からなる多核金属錯体クラスターは、金属イオンのd電子に基づいた多彩な電子・磁気機能を有する物質群であり、これらを効率よく利用することができれば、次世代スピン/エレクトロニクスデバイスに向けた革新的材料を実現することが可能である。本研究では、高性能な電池特性や磁気抵抗特性を実現するべく、様々な多核金属錯体クラスターおよびそのナノカーボンとの複合体に関する研究を行った。 今年度は、多核金属錯体分子であるポリオキソメタレート(POM)とグラフェン(RGO)からなるPOM/RGOナノ複合体を作成し、それらを正極活物質とするリチウム二次電池特性(分子クラスターの電池特性)を検討した。その結果、これまでの分子クラスター電池の中で、もっとも大きな放電容量ともっとも速い充放電を示すことを見出した。このように高次のナノカーボンとの複合化が高性能な蓄電機能を得る上で非常に重要であることが分かった。現在、さらなる発展として、グラフェンよりも高次である三次元のナノポーラスカーボンを用いた複合化を試みており、より良い電池特性が得られつつある。ここでは、さらにナノ複合体における高性能化の要因を検討するため、in situ 固体NMR測定システムを独自に開発し、ナノ複合体電池の充放電中のLi 固体NMRを測定した。その結果、放電過程において、ナノカーボン電極上に集積したより多くのLiイオンが、ナノカーボン上の負電荷と大きな電気二重層キャパシタを形成し、それが大きな容要因であることを明らかにした。このように、高性能な蓄電特性を得るための分子クラスターシステムの設計指針を得つつある。 一方で、錯体クラスターナノ複合体の磁気抵抗効果の研究については、磁気特性を示すPOMとSWNTからなるナノ複合体の作製に成功しており、そのデバイス化を進めているところである
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次元ナノカーボンであるグラフェンとのナノ複合化により、これまでで最大の放電容量、急速充電を実現できた点で計画以上に進展したと言える。また、グラフェンから発展させて、三次元のナノポーラスカーボンの開発とそのナノ複合化にも取り組んでおり、研究は計画通りに順調に進んでいると言える。 一方で、磁気抵抗効果の研究については、試料作製を終えた段階であり、こちらも計画通りに進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
蓄電機能については、より高次のナノカーボンである3次元ナノポーラスカーボン(NPC)を開発し、NPCと分子クラスターのナノ複合化を検討するとともに、その電池特性を測定する予定である。なお、in situ XAFSや固体NMR測定なども利用することで機能解明を引き続きおこなっていく。 磁気抵抗効果の研究については、磁気特性を示すPOMとSWNTからなるナノ複合体を作製することができたので、今後はこれをナノギャップ電極間にキャストすることでデバイスを作製し、その磁気抵抗効果を検討していく予定である。
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