研究領域 | 配位プログラミング ― 分子超構造体の科学と化学素子の創製 |
研究課題/領域番号 |
24108724
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70292951)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | pH応答性蛍光ラベル化プローブ / タンパク質ラベル化 |
研究概要 |
細胞内の特定の器官や細胞は低pH環境を作り出しており、pHはシグナル伝達や細胞の増殖分化、アポトーシスなどと深い関わりがある。生体内において低pH環境やpH変化を可視化する手法を開発することは細胞内移行経路をはじめとする様々な生命現象を解明するのに重要な役割を果たすと考えられる。我々はこれまでに変異体β-ラクタマーゼを用いたタンパク質ラベル化システム(BL-tagシステム)を開発しており、細胞内外のタンパク質の特異的蛍光ラベル化を達成している。本研究ではBL-tagシステムとpH応答性蛍光色素を組み合わせることで標的タンパク質の低pH環境への変化を可視化することを目的として研究を行った。 ローダミンのようなキサンテン系蛍光色素は開環構造では蛍光を有するが、閉環構造では蛍光団の共役が解消されるため、吸収および蛍光を有さない。この開環・閉環反応を制御機構とするpH応答性蛍光色素がこれまでに報告されている。この蛍光色素を参考にテトラメチルローダミンを基本骨格とした蛍光色素と細胞膜透過性リガンドであるバカンピシリンを結合したpH応答性蛍光ラベル化プローブをデザインおよび合成した。このプローブはBL-tagと結合し、中性条件下では蛍光を発さないが、酸性条件下では蛍光色素部位が開環することで蛍光を発すると考えられる。プローブの各pHにおける吸収および蛍光スペクトルを測定したところ、pHの低下に伴ってローダミン由来の吸収および蛍光が増大した。このプローブを用いて、生細胞においてBL-tag融合タンパク質のラベル化を行い、細胞を固定し、緩衝液のpHを低下させたところ、蛍光増大が確認された。今後このプローブを用いることで細胞内タンパク質のpH環境の可視化や細胞内移行経路の解析につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pH応答性蛍光ラベル化プローブの設計及び合成を行い、試験管レベルと細胞レベルにおけるpH応答性を確認することができた。また、細胞内のタンパク質をラベル化することにも成功しており、研究計画は、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、生細胞に発現しているタンパク質の動態を詳細に調べるために、1分子レベルで蛋白質を蛍光検出することのできるプローブを開発する。そのためには、より特異的かつ高感度にラベル化できるプローブを開発する。それに加えて、1分子蛍光イメージングが可能となる光安定性の高いプローブを設計・開発する。これらの性質を併せ持つプローブを開発した後に、全反射照明蛍光顕微鏡によって、細胞膜蛋白質や膜近傍に存在する蛋白質のイメージングを行う。
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