研究実績の概要 |
鎖状遷移金属クラスターの合成とそれらを量子ドットとした超分子構造の構築:金属―金属結合で連結したPt6, Pt4Pd2, Pd8等の骨格を持つ直鎖状低原子価遷移金属クラスターを量子ドットと考え,その両末端にトンネル障壁となりうる末端配位子や有機連結基の導入により1次元単分子素子の開発を行った。これら分子モジュールの合成と機能解析,特に,直鎖状Pd八核クラスターの構造と電子状態,吸収スペクトルの温度変化等に関し詳細な分析を行った。このような知見を基に,金属鎖に沿ったチャンネルを経由する量子伝導素子としての可能性を調べる目的で,基底状態及び遷移状態の密度汎関数法による分子軌道計算とそれらにもとづく量子伝導シミュレーションを班員間の共同研究として行った。さらに,Pd8核錯体の溶存状態の温度変化に関するNMR測定から,高温ではPd8核鎖がPd4核フラグメントに解離するが約60°C以下では自己集合的に整列しPd8核鎖を再生することが明らかとなった。また,Pd8核錯体の酸化還元挙動についても研究を行った。 環状遷移金属クラスターの合成とそれらを用いた機能素子の開発:Au4M2Cu2 (M = Au, Ag, Cu)環状金属クラスターの合成法を確立し,環内部での分子認識やそれに伴う光物性変化に関して研究を行った。また,同様の配位子を用いたAu4核錯体は強い青色発光を生じることを見出し,さらにそれが金属多核中心の三重項励起状態からの発光で,そのエネルギーがAu4核構造に応じて変化することの詳細を明らかにした。Cu(I)を用いたクラスター合成に関しては,四座配位子dpmppmを用いることで,これまでにない新奇なCu2, Cu4, Cu6, Cu9, Cu16ヒドリドクラスターが系統的に得られることを見出した。これらCuヒドリドクラスターは水素吸蔵や水素化触媒に関連して期待が持たれる。
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