研究概要 |
1.目的 分子を階層構造の構成単位とすることで、分子の形状や分子間で生じる共有結合、水素結合、および金属を伴った配位結合を利用して様々な構造・細孔を有する多孔体を構築することが可能である。本研究では液面における分子の自己組織化を巧みに利用し、配列が制御された分子薄膜をナノスケールで作製するとともに、創製した薄膜とその界面の構造や特性を詳細に調べることで、半導体膜や光電変換素子としての応用の可能性を探るとともに、ナノスケールで起こる新しい現象や機能を開拓する。 2.研究成果 分子構成要素として、カルボキシル基を配位部として有する三角形状の1,3,5-tri(4-carboxy-phenyl)-benzene (BTB) を用いた(下図)。この分子の大きさは16Å程度であり、分子間で水素結合または金属イオンを介した配位結合を形成することで多孔性のネットワークを構築することが期待される。ナノシートの作製には気液界面を利用し、下層液として純水及び硝酸銅水溶液を用いることで結合様式の異なるネットワーク構造を有するBTBのナノシートの作製を行った。 気液界面におけるナノシートの形成過程及び分子配列を調べるために、Langmuirトラフに満たした下層液表面にBTBを含む溶液を展開後水面をバリアで圧縮し、表面圧を変化させながら気液界面での放射光X線回折(XRD)及びBrewster angle microscopy(BAM) 測定を行った。純水、銅水溶液どちらに関しても、低い表面圧(~0 mN/m)において得られたXRDパターンに複数のシャープなピークが見られた。純水、および銅水溶液上で得られたBTBナノシート(それぞれBTB-water, BTB-Cuと名付ける)が高い結晶性を有し、表面圧縮をしない状態で気液界面で分子の規則配列が起こっていることがわかった。
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