原子・分子スケールの厚みを有する2次元ナノシートは、その次元性に由来した特殊な電子状態など基礎物性研究の観点、および分子デバイスへの適用という応用の面で注目を集めている。一方で、有機分子が金属イオンとの配位結合を介し連結した3次元ネットワーク構造を有する配位高分子は、様々な金属イオンと有機配位子の組み合わせが可能なことから設計性や物質群としての多様性に優れ、多くの新規化合物が合成されている。本件においては、分子1層の厚みを有する大面積の配位高分子2次元ナノシートを得ることを目的に、気液界面におけるナノシートの形成過程を明らかにしシート作製時の種々の条件が分子の配列状態にどのような影響を及ぼすかを詳細に調べた。 トラフ(浅い容器)を硝酸銅水溶液で満たした後、その表面に金属と結合可能なカルボキシル基を有するポルフィリン(MTCPP)の溶液を展開した。表面圧を測定しながら液表面を棒(バリア)で圧縮することによりナノシート(NAFS-13と呼ぶ)を作製した。放射光X線を用いたその場X線回折(XRD)測定により、液面上に形成したNAFS-13ナノシートの面内(in-plane)XRD測定を行った。また、MTCPPを液面に展開後、表面をバリアで圧縮する過程において平均分子占有面積(a)に対する表面圧(π)の変化(π-a isotherms)を調べた。表面圧が0 mN/mの状態においても結晶性に由来する反射ピークが観測されたことから、液面上でMTCPPと金属イオンとの間に配位結合が生じ、表面の圧縮なしに自発的に結晶性のナノシートが形成されていることが示唆された。 上述のナノシート形成過程に関する知見をもとに、シート作製方法を改良することで、よりサイズが大きく均一なナノシートを作製することに成功した。
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