研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
24109501
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
諸岡 聡 横浜国立大学, 工学研究院, 研究教員 (10534422)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 長周期積層型規則構造 / 降伏強度 / 加工硬化 / 中性子線 / 応力分配 |
研究実績の概要 |
25 %のLPSO相(Mg97Zn1Y2)と85 %のLPSO相(Mg89Zn4Y7)を有する2相マグネシウム合金の押出材に対して、パルス中性子線を用いて引張変形中その場測定を実施し、2相マグネシウム合金中のLPSO相の変形挙動を調査した。 変形前の格子間隔を基準として、格子間隔の変化から格子ひずみ(弾性ひずみ成分)を算出する。両合金ともにαMg母相が先に格子ひずみの増加の割合が減少する。これがαMg母相の塑性変形の開始を意味し、巨視的な降伏強度と一致する。その後、LPSO相の格子ひずみの増加の割合が大幅に増加する。ここで、αMg母相とLPSO相間に不整合ひずみが生じる(応力分配)ことで、内部応力が与えられる。つまり、LPSO相が弾性変形し続けることが、内部応力を増加させ、加工硬化を律速させる駆動力となる。 したがって、降伏強度は、先に塑性変形する構成相の強さで決まり、加工硬化は、塑性変形しがたい構成相がいかに弾性変形状態であるかによって支配される、つまり、大きな内部応力場の発生が重要となることが分かった。また、LPSO相は、5 %前後の巨視的ひずみを与えても、弾性変形しか起こしておらず、硬質相として寄与しているという成果も得られた。 このような新測定手法を取り入れ、学術的観点ならびに工業的観点に新たな目を向けることに対して非常に意義があり、降伏強度・加工硬化特性の発現原理を解明することは、高強度マグネシウム合金の開発を指針するために重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中性子線を用いた実験はマシンタイムが限られているため、年間で数日しか行えないこと、LPSO相という濃度変調と構造変調をともなった新奇なシンクロ型の長周期積層構造に対するデータ解析が予想以上に複雑かつ時間がかかる点にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、LPSO相の変形挙動を定量化することが目標であるため、2相マグネシウム合金中のLPSO相の引張変形挙動から導くことは困難であった。そこで、LPSO単相のMg85Zn6Y9組成の鋳造材に塑性加工を付与しアレンジし、加工率の異なる2種類の試験片を作製し、昨年に引き続き、中性子線を用いたその場測定を実施する予定である。
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