研究領域 | シンクロ型LPSO構造の材料科学 ―次世代軽量構造材料への革新的展開― |
研究課題/領域番号 |
24109502
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
石川 和宏 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (10312448)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水素貯蔵 / 水素透過 / 構造変化 |
研究実績の概要 |
プロジェクト共通試料として提供されたLPSO単相Mg85Zn6Y9合金の水素化速度、水素貯蔵特性および水素透過性について調べた。LPSO合金をダイヤモンドやすりにて150μm以下に粉砕した後、真空引きを行い300~400℃に加熱した。そこに4MPaの水素を加え、圧力の時間変化から平衡に達するまでの時間を求めた。その結果、水素吸蔵が平衡に達するまでには400℃で2時間、350℃で12時間であった。ところが、300℃では45時間経過しても平衡に達しなかった。以上より、LPSO合金の水素吸蔵は他のMg基合金と同様に遅いことが分かった。 取り出した試料の構造を調べたところ、350℃以上で水素化すると、LPSO相は消失してMgH2、YH2,YH3およびMgZn2相が生成した。一方、300℃で水素化すると、水素化が十分に進行しないため未反応のLPSO相が観察された。 次にPCT測定を行った。400℃では約1.3MPaで圧力プラトーが観察され、4MPaの水素貯蔵量は約5wt%であった。しかし、完全に水素を放出しないことが分かった。測定後の試料のX線回折図形より、Yの水素化物が生成していることが明らかとなった。測定温度を350℃に低下させると、プラトー圧は低下した。しかし300℃では水素化が十分に進行しないため、水素貯蔵量は見かけ上低下した。 プラトー圧と温度の関係をキッシンジャー法により整理したところ、LPSO水素化物の生成エンタルピーは約72kJ/molであった。これはMg-MgH2反応とほぼ同等の値であり、LPSO合金の水素貯蔵は、Mgの水素化によるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、①LPSO合金の水素化についての基礎的知見を明らかにする、②水素貯蔵合金としての可能性を検討する、③水素透過合金としての可能性を検討する、を目標とした。 ①については、LPSO合金の水素化速度が低いが、5wt%を超える水素を貯蔵すること、水素化により生成する水素化物を同定したこと、等によりほぼ目標通りに研究が進展した。 ②については、十分に水素化を進行させるには350℃以上の高温を必要とするため、水素貯蔵合金として知られているLaNi5のように、室温で動作させることは困難であることが分かった。 ③については、水素貯蔵量を調べた結果、水素固溶域において水素固溶係数が小さい、すなわち水素貯蔵量の圧力依存性が小さく、水素透過合金に適さないことが分かった。 以上より、本研究は順調に進展していると判断されるが、LPSO合金の最大の特徴であるMgと濃縮層の積層と水素貯蔵特性の関係が未だ不明確であり、早急に解明することが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度から引き続きLPSO合金の水素化に関する基礎的知見を得るとともに、水素を利用した材料改質についての可能性を見出すことを目的とする。 昨年度研究対象としたMg-Zn-Y系合金と同じく、Mg-Ni-Y系でもLPSO単相合金が得られる。これは、水素解離触媒作用があるとされるNiを含んでいるため、より優れた水素化特性が得られる可能性がある。そのため、Mg-Ni-Y系LPSO合金を対象に、水素化速度、水素貯蔵量、PCT測定、水素透過特性、水素中での構造変化について調べ、LPSO合金の水素化特性について引き続き解明していく。また、SPring-8の高輝度X線を用いたIn-situ構造解析も行い、水素化による構造変化の時間依存性を明らかにする。 昨年度の結果より、水素化物生成領域に入るとLPSO合金はMgH2、YH2、YH3、MgZn2に分解し、真空引きしても希土類水素化物が残存するため、水素化物が生成しない領域での使用も想定される。本年度はバルク状試料を高温で短時間水素化処理を行うことで、表面のみに薄く水素化物を生成させると、表面の硬さ、組織、耐腐食性が変化する可能性がある。LPSO相の水素化速度が遅いという欠点は、水素化を制御しやすいという長所となり得る。 LPSO合金の最大の特徴である積層構造と水素化の関連性については、同一組成でも熱処理によりLPSO構造を形成することが可能なタイプ2合金を用い、LPSO構造の有無と水素化特性を比較する。これらにより、水素化に及ぼすLPSO構造の影響を定量的に明らかにすることが出来る。
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