研究実績の概要 |
Mg-Zn-Y合金の18R構造のLPSO相の弾性特性の解明を対象として、研究を実施した。合金組成としては、LPSO相ほぼ単相の組成が得られるMg85Zn6Y9 (at%) を選定した。また、多結晶材の弾性率測定から単結晶の弾性率を算出するためには、多結晶材と単結晶の弾性対称性が一致する必要がある。そのため、弾性率測定に使用する試料として、ブリッジマン法にて作製された一方向凝固材を用いた。一方向凝固材に対して、光学顕微鏡による組織観察、X線回折解析による相同定、X線極点図による集合組織の解析を行った。また、超音波共鳴法による弾性率の測定を行った。光学顕微鏡による組織観察の結果、一方向凝固材はLPSO相ほぼ単相であることが明らかとなった。また、X線極点図により、板状形状を有するLPSO相結晶粒において、六方晶で指数付けした際の結晶の11-20が凝固方向に平行に配向したような集合組織が形成されていることが明らかとなった。このことから、一方向凝固材は巨視的には六方晶の弾性対称性(独立な弾性スティフネスc11, c33, c13, c44, c66)を有することが明らかとなった。共鳴法を用いた弾性率の測定により、一方向凝固材の凝固方向に平行な方向のヤング率は、純Mgの等方体多結晶のヤング率よりも高いことが明らかとなった。一方向凝固材の弾性スティフネスから本研究において考案したVoigt-Reuss-Hill近似を用いて、バリアントの存在を考慮した六方晶系の単結晶の弾性スティフネスを算出した。単結晶の弾性スティフネスからc軸に平行および垂直な方位のヤング率を算出した結果、c軸に平行な方向のヤング率は垂直な方向のヤング率よりも高く、18R構造における弾性率の異方性が本研究により初めて明らかとなった。
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